「ハラル認証」手続きと運用体制の整えかた(前編)新たなビジネスチャンス(2/3 ページ)

» 2015年04月28日 06時00分 公開
[企業実務]

第三者機関が認定する制度

 ハラルは、ムスリムにとってなくてはならないもの。いわば「安全で健康な生活を営むためのガイドライン」だと佐久間氏は言う。では、ハラルの線引きはどのようにして行われるのだろうか。

 「基本的には、イスラムの聖典である『クルアーン(コーラン)』と、預言者ムハンマドの言行録『ハディース』に準拠しており、イスラム教の唯一神であるアッラーが創造したものは、いくつかの例外を除き、すべてハラルです。

 しかし、その解釈は国や地域によって厳格なものから緩やかなものまでさまざま。一定のルールがあるわけではなく、非ムスリムである私たち日本人は、少しずつ学びながら経験則をノウハウにしていくしかありません。ここがハラルの難しいところですね」

 例えば、イスラムの教えでは飲酒や豚の食用を禁じているため、アルコールや豚肉・豚脂ほか、それらに由来する成分が入ったもの(みりんなどの調味料や保存料)はノン・ハラルだ。

 しかし、国や地域によっては、飲食店でのエタノール消毒やしょうゆなどの醸造中に自然に生成される微量のアルコールならハラルとして認めるケースもある。

 一方、牛肉や鶏肉など、たとえ禁忌にあたらない食材であっても、ルールに則って処理されなくてはならず、製造ラインから保管場所、輸送方法にいたるまでノン・ハラルのものとは物理的な分離が要求される。混在した場合はノン・ハラルになってしまう。ほかにもさまざまなルールが存在するため、非ムスリムにとってその判断は容易ではない。そこで第三者機関が審査し、お墨付きを与えるのが「ハラル認証」制度である。

 佐久間氏によれば、ハラル認証は約40年前にマレーシアで始まり、その後各国で認証機関が設けられるようになったという。

図表3:国内外の主なハラル認証機関(例)

 国によって認証機関の位置づけは異なり、行政の管轄下で活動するケースもあれば、宗教団体や民間企業などがその役割を担うケースもある(図表3 ※)。

 日本のように、1つの国に複数の認証機関が存在する例もあり、審査規準や認証期間、相互認証の関係など条件はまちまちだ。認証マークも各機関ごとに異なり、国際的には統一されたルールがないのが現状である。

 「認証機関を名乗る団体は、私どもが実績を把握しているだけでも15〜20はあり、局地的な団体も含めれば、世界に200〜300あると言う研究者もいます。現時点では、国策としてグローバル・ハラル・ハブを推進し、審査規準が厳格なマレーシアの認証がスタンダードといわれていますが、どの国でも通用するわけではありません。そもそも“ハラルが常識”の中東圏では認証の必要がなかったため、ここ数年で導入されるようになったくらいです」

※2015年1月26日に移転。マレーシア ハラル コーポレーション株式会社(MHC)
東京都新宿区四谷4-32-1 吉岡ビル3F TEL:03-6869-1046 

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