「ハラル認証」手続きと運用体制の整えかた(後編)(2/3 ページ)

» 2015年04月30日 06時00分 公開
[企業実務]

認証審査の4つのポイント

図表3:認証審査で重視されるポイント

 申請内容の精査や実査の段階でハラル規準に適合しない成分や部品があれば、代替(取替え)や改善を求められる。場合によっては、製造方法の見直しや新たな場所の確保なども必要になる。

 再審査のたびに費用もかかるので、判断に迷う部分があれば早い段階で認証機関に相談し、対策を講じておいたほうがよい。

 「審査のポイントは4つあります(図表3参照)。まず、原材料がハラルかどうか。イスラムの教えではトイバン(健康的・衛生的・高品質)が重視され、豚由来などナジス(不浄)とされるものが含まれてはいけません。副材料から添加物まで、すべての成分の詳細な情報提示が必要です。

 2つめは、工場設備や製造工程、衛生環境がハラルかどうか。とくに製造ラインのハラル性はかなり重要で、道具類はすべてハラル専用でなければなりません。ハラル以外のものとのコンタミネーション(混合・接触汚染)は絶対に避けなければならず、単純に製品を分ければ済む話ではないのです。ここが宗教なんですね。

 機械や設備のハラル化は認証機関が派遣するイスラム教徒の立ち会いのもと、宗教洗浄(7回)によって行います。そのうち1回は、認証機関が支給する業務用粘土洗剤を使って洗浄することが義務づけられています。

 当然ながら、原材料や製品の保管場所もハラル専用でなければなりません。これが3つめです。

 そして4つめは、ハラル管理者としてイスラム教徒を2名以上雇用することです。この段階で多くの企業が諦めてしまうため、最近は緩やかな規準を示す認証機関も増えてきました」

 とくに日本ではムスリム人口が少ないうえ、ビザや人件費などの問題からも新たな雇用は困難である。

 そこで、雇用以外の3つのポイントを満たしていれば、あとは社内にハラル委員会をつくり、複数人で管理するなら認証を与える傾向が強まっているという。その前提として、企業の担当者には、ハラル研修や定期的な管理者講習などを義務付ける認証機関も少なくないようだ。

 「最近の例では、岡山・廣榮堂の『きびだんご』があります。ハラル研修を受けた工場責任者と2名の従業員で委員会を構成し、昨年12月に認証を取得しました。

 そもそも、和菓子は自然由来の原材料を用いて伝統的な製法でつくることが多いため、そのままハラルで通用するものが多いのです。同社の場合、原料が国産の穀物であるうえ、製造ラインが工場内の単独フロアに設けられていた点も、ハラル性を確保しやすかった要因といえるでしょう」

 廣榮堂では、この1月から、認証マークのついた『きびだんご』8商品の販売を開始した。ムスリムの訪日観光客向けのみやげ菓子として、直営店のほか岡山県内外の駅や空港、百貨店の免税店での販売に力を入れていくという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.