21世紀の農業革新を起こせ 衛星技術ベンチャーの参入相次ぐ宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2015年05月02日 09時00分 公開
前のページへ 1|2       

オランダでも衛星画像の商業利用進む

 米国だけではない。農業分野での衛星リモートセンシングの活用は欧州でも進んでいる。注目すべきはオランダだ。オランダの農地面積は日本の半分以下だが、農産物輸出額は米国に次いで世界2位の農業大国である。この背景の一因には、地球観測画像を活用した高度な農業支援サービスが存在する。

 オランダは独自衛星を保有していないが、各国衛星画像を購入し、衛星リモートセンシングの商業利用とビジネスモデル構築に力を入れてきた。例えば、NSO(オランダ宇宙局)は政府資金で購入した各国衛星画像を100以上の省庁、企業、団体などに無償提供している。こうした結果、商業利用が進んでいる。その1つが農業分野というわけだ。

 一例が蘭eLEAFである。同社は地球観測画像を利用した農業および水資源管理の支援を行っている。天候や温度などの現場データと衛星データを組み合わせることで、農業法人に対して、施肥時期や収穫時期などの情報を提供するソフトウェアや、灌漑管理支援のシステムを開発し、オランダ国内にとどまらず、中南米やアフリカなど世界30カ国に展開する。

動画が取得できませんでした
eLEAF The Missing Link

 このように、欧米でも衛星リモートセンシングの活用が進む背景にあるのは、農業を21世紀の社会課題としてとらえ、農業技術の高度化を支援し、市場をグローバルに広げるという戦略的イニシアチブの結果と言える。日本からもこうした取り組みやベンチャー企業が出てくることを期待したい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.