「そんなことはありません。私たちは日本の優秀な技術にとても大きな期待を寄せています」と話すのは、トゥールーズの本社工場を案内してくれた広報マネージャーのヘイディ・カーペンターさんだ。「日本の約20社の協力企業がA350WXBプロジェクトに参加し、優れた製品を納入してくれています」
プロジェクトに日本から参画しているのは、ジャムコ(胴体および垂直尾翼用の縦通材)や神戸製鋼(ランディングギア部材)、東邦テナックス(炭素繊維)などだ。また、すべてのA350WXBに搭載される「トレントXWB」エンジンの一部製造を三菱重工業や川崎重工業が分担している。しかし「準国産機」と言われるボーイングの787に比べると、日本企業が請け負っている比率はずっと小さい。
私が787の完成間近の時期に米国シアトルのボーイング工場を取材で訪ねたとき(参考記事)、エンジニアたちが「“メイド・イン・ジャパン”のテクノロジーがなければ787の誕生もなかったよ」と口を揃えていたことを思い出す。787は機体の35%を日本の重工メーカーが分担している。ボーイングはなぜこれほど大きな部分を日本に任せることになったのか? 開発責任者は次のように話していた。
「767や777も海外の多くの協力メーカーとパートナーシップを組んで開発・製造を進めてきました。その中でも、日本から納入されるパーツは非常に優秀だったのです。品質が高いだけではありません。こちらの要求する予算枠で、しかも約束の時間に遅れずに製品を仕上げて届けてくれる。そんな実績が大きな信頼となり、787という社運をかけたプロジェクトを成功させるには多くの部分を日本に任せたほうがいいという発想になりました」
A350WXBの日本の製造分担比率について、エアバスは詳しい数字を公表していない。おそらく10%台にとどまると思われ、787の35%とは大きな差だ。しかし広報マネージャーが「日本の技術には大きな期待を寄せている」と言っていたように、エアバスが日本企業の参入を阻んでいるわけでは決してない。むしろ供給する側の生産能力に限界があるため、取引先をこれまでボーイング1社に絞ってきたとみるべきだろう。その構図がいま、確実に変わりはじめている。
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