なぜ大井川鐵道の経営再建に北海道のホテル会社が?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2015年06月05日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

名古屋にゆかり

 エクリプス日高の前身は1987年に開業した静内ウエリントンホテルだ。しかし経営が悪化し、地元関係者が経営を引き継ぐために桜舞観光を設立し同ホテルを買収した。それでも経営は思わしくなく2013年に自己破産。それを新たにエクリプス日高が購入して、静内エクリプスホテルとなった。

 ホテル予約サイトなどの情報では、リニューアルされた静内エクリプスホテルの評判は良さそうだ。しかしエクリプス日高の事業はこれ1つだけ。つまり企業再生実績もこのホテルのみ。鉄道や運輸事業の経験は無い。鉄道との接点は、かつて静内駅で販売していた駅弁「日高つぶめし」を復元販売するくらいだろうか。

 いずれにしても大井川鐵道との接点は見えない。どちらかというと、大井川鐵道を支援する場合ではなく、地元で不通となっている日高本線を支援してあげてほしいけれど、費用の桁が違う。日高本線は今年1月に高波による土砂流出が発覚。静内駅を含む鵡川駅〜様似駅間116キロメートルが不通になったままだ。しかしJR北海道の見積もりでは復旧に26億円もかかる。大井川鐵道のほうが安い。

 大井川鐵道とエクリプス日高を結ぶヒントは、エクリプス日高社長の前田忍氏のプロフィールにあった。前田氏は岐阜県出身と報じられていた。Facebookで公開されているプロフィールによると、岐阜県瑞浪市の麗澤瑞浪高等学校を卒業し、名古屋商科大学大学院でMBAを取得。職歴としてはテレビ通販の「ショップジャパン」で知られるオークローンマーケティング(愛知県名古屋市)、次に銀しゃり本舗(現:銀の森コーポレーション、岐阜県恵那市)での新規事業開発を経験した後、エクリプス日高の社長に就任している。企業経営の才能があり、観光業の経験もある。名古屋に縁の深い方だ。名鉄とも縁があったと思われる。

大井川鐵道が十和田観光電鉄から購入した電車。元東急電鉄の7200系を十和田観光電鉄が改造し、1両の両端に運転台を設置している 大井川鐵道が十和田観光電鉄から購入した電車。元東急電鉄の7200系を十和田観光電鉄が改造し、1両の両端に運転台を設置している

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