ベルリンの壁崩壊から26年 自動車メーカーの世界戦略はどう変わった?池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2015年06月08日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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アライアンスはゆるやかな繋がりへ

 全てのブランドでプラットフォームを共用化し、数の力で部品の購買力を高めたところまでは400万台クラブの流れの通りなのだが、予想外の利益をアウディが叩き出すことになる。同じプラットフォームの製品をプレミアム化することによって、アウディは1台あたりの利益がフォルクスワーゲンの5倍に達した。シュコダ、セアト、フォルクスワーゲンで台数を稼ぎ、利益はアウディで積み増す。期せずして新しい時代のアライアンスのあり方に1つの答えが出た。

 数の原理はプレミアムブランドとの相乗効果によって生きてくるわけだ。トヨタがレクサスブランドの定着に躍起になる意味はここにある。いつからという話は必ずしも明確ではないが、少なくとも2010年代の自動車メーカーのアライアンスは、工場と組織を含む人を取得して、自社の一部として上書きしてしまうのではなく、他ブランドの個性を潰さず、そのブランド価値をそのまま活用する方向へ変わっているのだ。

 この文脈でとらえると、スバルとのアライアンスを結んで以降、トヨタがスバルを同化させようとしないことも頷ける。

 もちろん戦略はそれだけではない。OEM(相手先ブランドによる生産)やモジュールの共用化をうまくはかりながら、生産と商品企画、販売を分業化して利益率を高めていきたいということもトヨタの頭にはあるはずだ。マツダのケースは恐らくこちらだろう(関連記事)

 自動車メーカーのアライアンス戦略は今も進歩し続けている。現在起きている動きの絵柄が後になって見えてくることもあるだろう。それは過去から連綿と繋がる試行錯誤の現在地なのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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