北米で絶好調のスバル、しかし次の一手が難しい池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2015年06月22日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

高付加価値メーカーたるゆえん

 さて、こうした世界のマーケットに対して、スバルはどうアプローチすれば100万台を突破できるのか。

 スバルといえば、水平対向エンジンとAWD(全輪駆動)、ぶつからないブレーキの「アイサイト」が3本柱になっており、北米でも日本でもその3つがスバルのキャラクターを決めている。

 さてその柱の1つ、水平対向エンジンは部品点数が多い。単純な話、ヘッドもシリンダーも2つある。基本的に高コスト体質エンジンなのだ。これは2つ目の柱であるAWDも同様で、最新の電制システムを使うような高性能AWDはやはりメカニズムの素養そのものが高コストになる。スバルは現在、AWDのシステムを松・竹・梅と3種類持っているが、当然高いものほどスバルらしい高度なシステムとなっている。マーケットで商品の個性をアピールしようと思えば最低限真ん中の電制システムを使いたくなる。

スバルの代名詞でもあり、多くのファンに支持される水平対向エンジンだが、コスト高という問題を抱えている スバルの代名詞でもあり、多くのファンに支持される水平対向エンジンだが、コスト高という問題を抱えている

 日本のスバルファンのように、スバルの個性的な技術を高く評価してお金を払ってくれるユーザーばかりなら苦労はないが、「水平対向でも何でもいいから安くしろ」という層も世界規模でみたら膨大な数がいて、その層にアプローチしていくことが今のスバルにはとても難しいのだ。

 スバルのラインナップを眺めて見ると、トップレンジには「レガシィ」があり、これがセダンの「B4」とワゴンの「アウトバック」としてバリエーション展開され、7人乗りニーズに対応する「エクシーガ・クロスオーバー7」がある。その下には「レヴォーグ」、「フォレスター」、「XV」、「インプレッサ」、「BRZ」、「WRX」と数多くのモデルが展開されるが、これらは全てインプレッサのシャシーがベースになっている。

 インプレッサは明らかに先進国用のCセグメントであり、ラインナップ上最も安いインプレッサでも約160万円からという値付けだ。新興国の売れ筋は100万円を切るBセグメントなので、クラス上のインプレッサベースでそれらと価格で渡り合うのは不可能に近い。Bセグメントを持たないスバルには厳しい状況だ。

スバルのモデルレンジの多くはこのインプレッサがベースになっている スバルのモデルレンジの多くはこのインプレッサがベースになっている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.