ビールのアイコンを揺るがす、米国ビール業界の異変来週話題になるハナシ(1/4 ページ)

» 2015年06月29日 08時00分 公開
[藤井薫ITmedia]

来週話題になるハナシ:

 24時間365日、いまも世界のどこかでユニークで刺激的な話題や新しいトレンドが次々と生まれている。だが、大半は情報としてこぼれてしまっている。そんなメインストリームでない情報こそ、ビジネスで使えるネタが詰まっているのではないだろうか。

 そこで、情報感度の高いビジネスパーソンならば、ぜひとも押さえておきたいトレンドや話題をちょっと先取りして紹介したい。プライベートにビジネスに、ちょっとしたインスピレーションのネタとして、役立つハナシを探るコラム。


 ビールの本場である欧州からは「水のように薄い」と言われつつも、世界で存在感を誇ってきた米国産ビール。その栄光に大きく貢献したのが、米国ビールのアイコンである「バドワイザー」だ。その歴史は19世紀までさかのぼり、もともと石鹸(せっけん)やロウソクの製造業で成功したドイツ系移民のEberhard Anheuser(エバーハルト・アンハインザー)が、経営困難に陥ったビール醸造所を手に入れたことから始まった。その後、ボヘミア(現在のチェコ共和国)で製造されていたピルスナー・ビールを参考にして作られたのが、1876年に発売された「バドワイザー」だ。

 「キング・オブ・ビール」として、「バドワイザー」は米国のカルチャーに多大な影響を及ぼしてきた。だがそのアイコン的ビールが今、危機的状況にある。米国での売り上げがどんどん減少しているのだ。

 確かに、ここ10年で世界のビール市場が大きく変化しているのは事実だ。長らく世界最大のビール生産量を誇ってきた米国が、2位に転落していることもある。また米国でビールの個人消費が落ちていることもある。ただし、米国だけに限らずドイツ、英国、アイルランドといった国々でも同様にビールの消費量は落ちている。

 パブでタバコが吸えなくなったという事情もあるようだが、「キング」の売り上げが落ちている最大の理由は、別のところにあると言われている。クラフトビールの台頭によって、米国ビール市場に大きなうねりが起きているのだ。

 2013年、米国ではバドワイザー(バドライトは除く)の年間生産量が、クラフトビールに抜かれた。さらにクラフトビールの勢いは止まらず、2014年にはついに約1000億ドル規模(12兆3600億円)の米国ビール市場で、11%をのシェアを占めるまでになった。2010年には、わずか5%しかなかったのにだ。これは業界関係者にとって驚きをもって受け取られた。米国ビール市場を牛耳るビッグブランドからすれば、大した数字ではないとみられていたが、そうも言っていられなくなった。どんどん勢いを増すクラフトビールのトレンドは、いま目が離せない状況になっている。

クラフトビールが台頭している
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