10月11日に上場予定、ソニーフィナンシャルの初値は決まっている?
「“グレーマーケット”では株価が上がっている」――。上場前の株を中心に機関投資家らが売買することを、グレーマーケットと言う。しかしグレーマーケットの売買価格は基本的に非公開、株価操作を狙ったニセ情報には注意が必要だ。
ソニーの金融子会社「ソニーフィナンシャルホールディングス」(ソニーフィナンシャルHD)の公開価格が40万円に決定した(9月4日の記事参照)。ソニーフィナンシャルHDは10月11日に東証1部に上場し、市場へ放出する株式数は親会社のソニーが72万5000株(発行済み株式の34.5%)、ソニーフィナンシャルHDが7万5000株を新規に発行する。これにより公開価格通りに資金が集まれば、ソニーは約3140億円、ソニーフィナンシャルHDは約300億円をそれぞれ調達できることになる。調達額が3000億円を超える銘柄は、2006年11月に上場したあおぞら銀行以来だ。
ソニーフィナンシャルHDのように株式を公開して証券取引所に上場することを、株式公開(IPO)という。株式を公開すれば、投資家が自由に売買できるようになるため、新事業の展開や設備投資など資金調達が容易になる。さらに企業の社会的な信頼が増すことで、金融機関からの融資も一般的に有利になる。
新規の株式公開の場合、1株あたりの公開価格の値段は、以下のようになる。まず主幹事の証券会社が企業の財務内容や将来性、相場の状況などを検討して仮条件(価格)を決める。(ソニーフィナンシャルHDの場合は38〜40万円)。そしてブックビルディング※の期間を設け、仮条件で投資家に「どのくらいの価格で購入したいか」をヒヤリングする。その結果、最終的な公開価格が決定する。
“グレーマーケット”の情報には注意
ソニーフィナンシャルHDの公開価格について、あるネット証券会社の幹部は「2008年3月期の業績予想で考えると、PER※は約60倍になるので割高だ」と指摘する。東京証券取引所が発表している9月末時点の平均PER(2030社)は21.7倍。いわゆる“ソニーブランド”で公開価格が割高となったのか、市場関係者の予想を超える価格となったようだ。「相場環境が良くなければ、上場日(10月11日)に40万円を割り込むかもしれない」(同)と厳しい見方だ。
ソニーフィナンシャルHDの初値は厳しい見方が強いが、あるアナリストは「目安となる株価が事前に決まるかもしれない」という。「欧州では“グレーマーケット”というものが存在する。このグレーマーケットで、上場前のソニーフィナンシャルHDの株を機関投資家が売買する可能性が高い。ここで取引された価格が初値の目安になるのだ」と話す。例えば、2006年に上場したあおぞら銀行の初値は495円だった。あおぞら銀行の公開価格は570円だったが、「グレーマーケットでは520〜530円で売買されている」ということが話題になった。
一般的に株式は、証券取引所で取引されるものだが、取引所外で売主と買主が売買するに当たっては、国によってルールが違う。「ソニーフィナンシャルHDのような大型の新規上場となれば、機関投資家の売買が盛んになる可能性が高く、グレーマーケットが自然に発生するだろう」(同)。このグレーマーケットはロンドンで行われることが多いが、売買価格は基本的に非公開なため実態はつかみにくい。
グレーマーケット――直訳すると「灰色市場」ということで、何とも怪しい雰囲気が漂う。ネット上ではグレーマーケットの“情報”が出回ることもあるが、もちろん信ぴょう性に乏しいものが多い。「グレーマーケットでは公開価格よりも高い値で売買している」――こうした嘘の情報を流すことで、株価の吊り上げを狙う輩もいる。ニセ情報で騙されないように、個人投資家は注意が必要だ。
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