あえて言う「新聞に未来はない」:ロサンゼルスMBA留学日記(2/2 ページ)
若者の新聞離れ、ネットの隆盛などを背景に、「日本の新聞に未来はあるのか?」と議論されることが増えている。新聞社にはネット専門の媒体にはない強みがあるが、それでも筆者は「新聞に未来はない」と考える。新聞はどこが強く、どこが弱いのだろうか?
広告モデルの難しさ
既に広告モデルを採用している事業者なら、嫌というほど分かっていると思うが、広告モデルは難しい。1つは、景気の影響を受けるということ。大口の広告クライアントが、不景気のため「マーケティング費用を少し抑えよう」と考えたとする。それだけで、例えば広告の出稿が数億円減り、メディアの減収につながる。
これがサブスクリプションモデルなら、景気が悪くなったからといってたちどころに新聞を解約するユーザーは少ない。反対に、景気が良くなったから新聞を2部とる、というユーザーも少ない。もちろん多少は景気の影響があるだろうが、収益性は安定しているといえるだろう。
2つ目は、広告主の意向に対処するのに時間と労力を取られるということだ。これはメディアを考える上で、実に難しい問題だ。
もちろん、ジャーナリズムを掲げるメディアである以上、広告クライアントに関する記事ばかりを書くわけにはいかない。広告営業の都合と、編集の都合は切り離して考えるべきだし、広告欲しさに提灯記事を連発するメディアがあるとすれば、それは世間から消えるべきだ。
だが現実問題として、大口広告クライアントの意向を完全に無視できるかというと、それは無理だと筆者は考える。少なくとも何らかの圧力を受ける、それが自然だ。これに対処するだけで、多少の気苦労がある。
一方でサブスクリプションモデルならば、完全とまでは言い切れないが、企業に気をつかう部分は少ない。“隣の芝生は青い”というが、今からでもサブスクリプションベースに変更したいと考えたことがある広告メディアは少なくないはずだ。
有料モデルから広告モデルへの移行をめぐっては、“メディア王”ことルパート・マードック氏が2007年末から2008年初めにかけて、傘下にあるWSJ(ウォールストリートジャーナル)電子版の無料化をほのめかしていた(関連記事)。だが2008年に入り、突然マードック氏は無料化方針を撤回。「有料を維持する」とコメントした。この事例が示すように、ことはそう簡単ではないのだ。
どの道も、いばらの道
本連載でも、テレビ局のビジネスモデルを取り上げた(関連記事)。テレビ局も大手新聞社も、「制作力」の強さを誇ることにかけては同じだ。だがテレビがまだ、当分メディア強者としてのポジションを維持するとみられるのに対し、新聞の未来は厳しい。とりあえずは、減収要因ばかりが目に付く。
あるメディア関連のコンサルタントは、こんなことを話していた。「今の日本のメディア財閥は、いずれは時代に応じた変化をせざるを得ない。どこから変わるかといえば、真っ先にビジネスが回らなくなる『新聞』からだ」――と。
新聞社が生き残る道は何なのか。コストを減らし、事業規模を縮小して生き残るのか。しかしそれでは、「その他大勢の報道媒体」と一緒になってしまう。かといって販売網も含めて、今の体制を維持するのは不可能だ。
今後新聞業界で再編があるのか、ビジネスモデルの変更があるのか、それともただ、ジワジワと衰退していくだけなのか。いずれにせよ、どの道も大手新聞社にとって一定の“痛み”を伴うことだけは、間違いがない。
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