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「目に涼しく、住んで省エネ」――ドイツ流建物緑化術:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
環境先進国ドイツで行われている建物緑化の試み。建物緑化には環境保護や企業イメージ向上といったメリットだけではなく、温度調整や目の保養になるというメリットもあるのだ。
40年でもとが取れる!?
もちろん、特殊緑化にはそれなりの費用が必要になる。建設時に最初から緑化する場合は1平方メートル当たり2000円程度、通常の屋上を後から緑化する場合にはその数倍の費用がかかり、施工主としては具体的な効果が気になる。
まず、屋上緑地は断熱材として機能するため、夏は冷房、冬は暖房エネルギーの節約に役立つ。特殊緑化を手がけるオプティグリューン社のパンフレット(右図)によれば通常の屋根は夏+80℃〜冬−30℃の激しい変化を繰り返すのに対し、屋上緑化の場合、屋根の温度変化は夏+25℃〜冬−5℃まで30℃しかない。このことは省エネだけでなく屋根材の耐用年数も左右し、緑化された屋根(材)はほとんど修理を必要としない。なお、管理の手間は工場の屋根など見た目を気にしないならば、年に1回、不適な草を引き抜く程度で済む。
さらに屋上緑地は保水効果があるので降雨時の下水量が減り、下水道料金の節約にもなる。また豪雨時には河川に流れ込む下水の量が減るため洪水防止に繋がり、自治体によっては屋上緑地整備に補助金を出している。
これらのメリットを総合すると、屋上緑地の建設費用を回収するのに要する時間はおよそ30〜40年。金銭的なメリットが屋上緑化の推進剤になるかどうかは微妙なところだが、企業イメージの向上や環境保全へ取り組みをアピールできる点も含めれば、十分強力なモチベーションになるのではないだろうか。
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