飛行高度を上げて燃費を改善――スターフライヤー、原油高との戦い
最近下落してはきたものの、いまだ歴史的な高値圏を推移している原油価格。燃料費が支出の多くを占める航空会社にとっては死活問題だが、新興航空会社のスターフライヤーが飛行高度を上げるなどして燃料費を抑える試みを6月から行っている。
原油価格の高止まりは航空会社にとって非常に頭の痛い問題。便数を減らす、燃費の良い機体を導入するなど、各社それぞれに対策を行っている。
羽田―北九州、羽田―関空で運航している新興航空会社、スターフライヤーが6月から取り組んでいるのは、従来より高い高度で飛行するなどして燃料消費を抑える試みだ。
これまでは高度9〜10キロメートルで飛行していたが、11キロメートル前後へと変更する。高度を上げると空気が薄くなることから燃焼効率は落ちるが、空気抵抗が大きく減るためにエンジンの出力が抑えられるという。スターフライヤーでは、「偏西風の季節変化や運航実績を加味して『羽田〜北九州線で高度を○○メートル上げると、○○キロの燃料を削減できる』といった具体例をパイロットや地上スタッフに周知して、飛行高度を上げることを推奨している」(スターフライヤー)と説明する。
また、高度を上げるだけではなく、飛行速度を燃焼効率の良い速度に近づけることで燃料費を削減する試みも同時に行っている。同社が使用しているエアバスA320-200型機の場合、燃焼効率が最も良い速度は時速797キロメートル。これまでは飛行時間を短くするため、燃焼効率を犠牲にして時速836キロメートルで飛んでいたが、時速828キロメートルまで落として運航している。
燃料費削減と飛行時間増加のトレードオフ
スターフライヤーの2007年度の燃料費は約40億円。原油高にともない、同社では2008年度は約50億円になると想定している。しかし、これらの試みによって最大2%程度は削減できると同社では期待している。だがもちろん、飛行高度を上げたり、速度を遅くしたりすると、飛行時間が長くなってしまうというデメリットも出てくる。
スターフライヤーは2008年3月期決算で15億5500万円の赤字を計上、2009年3月期での黒字転換を目標に経費削減に努めている。経費に占める燃料費の割合が高い同社にとって、燃料費削減は重要な課題。そのため同社ではほかにも、厨房設備をコンパクトに抑えて機体重量を軽くしたり、燃料費の安い羽田でできるだけ給油したりといった試みも行っている。
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