ミュンヘン再保険グループが地球温暖化に危機感を持つ理由
ミュンヘン再保険グループが9月24日から、東京で気候変動についての啓発活動を行っている。マスコミに頻繁に取り上げられるようになる以前から地球温暖化に警鐘を鳴らす「再保険会社」とは?
「再保険」という言葉をご存じだろうか?
再保険とは、大災害が発生した時に、保険会社が契約者へ多額の保険金を支払う負担を軽くするために加入する保険のこと。一言でまとめると、「保険会社のための保険」と言えるだろう。
昨年あたりから、地球温暖化問題が頻繁に新聞やテレビに取り上げられることが増えている。しかし、マスコミが報じる以前から、再保険を扱う会社は地球温暖化に危機感を抱き、警鐘を鳴らしていた。なぜなら、地球温暖化は再保険会社の収益に直結する問題だからだ。
例えば、地球温暖化の影響で、台風や熱波などの被害が大きくなると、保険会社の支払いは増える。そうすると、保険会社の保険を引き受けている再保険会社にも大きな影響が及ぶのだ。
「気候変動エキシビション」で啓発活動
ドイツのミュンヘン再保険グループでは1973年から35年にわたって、気候変動がもたらす影響について研究してきた。古くは西暦79年に噴火したヴェスヴィオ火山など約3000件の歴史的災害や、1980年以降のすべての災害データをデータベース化するなどして、現在2万5000件以上の災害を記録している。
再保険会社としては、世界が地球温暖化容認の方向に流れるのは危険なこと。そうならないためにも、豊富なデータベースを生かした気候変動についての研究成果を発表するなどして、しばしば啓発活動を行っている。
日本でも同グループの東京オフィスで「気候変動エキシビション」を開催する。地球温暖化についてのパネル展示をするほか、PCで世界の地域ごとの災害リスクを検索したり、環境をテーマにしたボードゲームで遊んだりできる。
エキシビション開催に当たり9月29日、ミュンヘン再保険グループは東京オフィスで会見を開いた。冒頭、ミュンヘン再保険グループの日本での窓口であるミューニック リー ジャパンサービスのクラウディア・ブーホルツァー社長は、「帝塚山大学などの調査によると、日本では地震の次に気候変動が不安要素としてとらえられているという。そんな日本でこのように気候変動についての研究を発表できることは意義深いことだ」とコメントした。
続いてミュンヘン再保険グループのジオ・リスク・リサーチ部門部門長のペーター・ヘッペ氏は、日本の気候変動について「1930年ころよりも平均気温は0.8度上昇し、年間で最高気温が35度を超える日は1980年ころの2倍になった」と話し、日本でも気候変動が確実に進んでいることを示した。
気候変動エキシビションは東京都千代田区の山王パークタワー14階のミュンヘン再保険東京オフィスで、10月3日(金)まで開催する。時間は13〜18時で、料金は無料。
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