テレビの質問で困ってしまうこと――リーマン・ショックと主婦の関係:山崎元の時事日想(2/2 ページ)
「リーマン・ショック」以来、テレビでコメントすることが多くなった筆者。しかしうまく回答ができず、苦労することがあるのだ。そこで手こずる質問を考えてみると、2つのパターンがあることが分かった。そのパターンとは……?
納得したい質問者の心理
もう1つ回答に困ることが多いのは、「程度の差」に過ぎない問題について、「影響は何ですか?」と聞かれる場合だ。「程度」に対して「何?」だ。
今回の一連の問題でいうと、金融安定化法案の採否が日本の主婦の生活にどう影響するかという質問だ。「今回、この法案が否決(可決)されたことで、私たちの生活には今後どのような影響が出ますか?」と聞かれる。
法案の評価自体が議論の余地のある問題だが、筆者は、この法案が10月3日に可決したことは一連の金融危機を緩和はするものの、最終的な解決策にはならないと考える。また法案の採否にかかわらず、米国の景気は減速すると考える。すると今後、何が日本の家庭に影響として現れるかというと、内容は先ほどの答えと似たようなものになってしまう。
うまい答え方があれば筆者がお聞きしたいくらいだが、1つの方法は「程度の差」を具体的な例えで説明してから、後に先ほどの内容を付け足すことだろう。
「現在の状態から今後及ぶ悪影響を、仮にマイナス100くらいだとすると、この法案が通ったことでこれがマイナス70とかマイナス60とかに緩和されるだろうというのが今回の可決の影響です。もしもこの法案が通らなかった場合には、米国の銀行に対する公的なサポートが今後決定的に難しくなるので、マイナス150またはマイナス200といった、悪影響になる可能性がありました。要はいずれの場合も、金融不安が完全に去るわけではなく、米国及び世界の景気にはマイナスの影響を与え続けることになるので、私たちの生活にも、たとえば……」といった要領で答える。これでいいのかどうか、筆者は今もって自信がないが、1つの答え方ではあろう。
世の中の多くの問題には複数の原因がある。また時間の順番に後先があるからといって、任意に選んだ何かが「原因で」、後で起こる何かがその「結果」だ、という構造に世の中が常に当てはまるようにできているわけではない。
一方、質問する側は、ともかく後で何が起こるのかを聞きたいことが多い。たいていは論理ではなく、予想を聞いている。それを自分が想定した論理にあてはめて、納得したいのが質問者の心理なのだ。
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