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これもオバマ効果!? クルマの“電化”が急速に進むシナリオ:神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)
深刻化する景気悪化の影響を受け、米国の自動車産業に“明るい”話題は少ない。しかし逆風が吹き荒れる中にも、光明が見え始めている。それはオバマ新政権が掲げた「脱石油」によって、急速にEVの存在感が高まっていることだ。
最大の懸案はハイブリッドカーやFCVよりも短い走行距離であるが、シンプルな構造ゆえに参入障壁はほかの環境対応技術よりも低い。日欧メーカーだけでなく、経営危機に瀕しているビッグ3も、EVに生き残りの道を模索し始めている。1月20日にはGMが、EV「シボレー・ボルト」向けの次世代バッテリーを生産する米国内の工場に3000万ドルを投じる方針を発表。建設が始まるのは2009年始めの予定で、生産開始は2010年になる見込みだ。
また、北米市場でEVの存在感が増していることを受けて、トヨタ自動車もエコカーの主力であるハイブリッドカーに加えて、iQをベースにした北米向けのEV「FT-EVコンセプト」を1月10日に発表。さらに欧州BMWグループでは1月22日、ニューヨーク市にMINIベースのEV「MINI E」を貸与すると発表した。BMWグループはニューヨークだけでなく、ニュージャージー、ロサンゼルスなどの都市にもMINI Eを展開する計画であり、北米のEV市場の今後に向けて布石を打つ構えだ。
オバマ新政権が「環境重視」「脱石油」を掲げたことで、世界最大の自動車市場である北米で、クルマの“電化”が急速に進むシナリオが出てきた。この流れは、ハイブリッドカーはもちろんだが、EV関連の技術や産業にとって強い追い風になりそうだ。
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