次世代のターゲットは“地熱”――ドイツの再生可能エネルギー開発:松田雅央の時事日想(2/2 ページ)
ドイツで進められている再生可能エネルギーの利用。近年、特に注目されているのは“地熱”。ドイツ政府による再生可能エネルギー研究補助金の分野別割合も年々増加しているのだ。
利用は閉鎖系
ドイツ国内で地熱利用に適しているのは主に北部、南西部、南部の3地域(下図)。赤色は100℃以上の温水が得られる地域でこれは発電に利用可能。その周辺に広がる黄色は60℃以上の温水が得られる地域で、発電よりも暖房・給湯への利用に適している。
地熱利用の方法にはいくつかあり、ドイツでは深さ数百メートルから数キロの井戸で温水をくみ上げ、熱を取り出した後、再び地中に戻す閉鎖系での利用を想定している(下図)。「二酸化炭素などの放出がない」「温水に含まれる重金属等の排出がない」「地下水の枯渇がない」といった利点があるためだ。
地熱利用のインターネット検索システム
地熱に関するデータベースの整備も進んでおり、このほどハノーファーにあるLeibniz応用地球物理学研究所が中心となって開発した地熱利用のインターネット検索システム(GeotIS、下図)が公開された。今後の地熱開発に広く活用するため約3万本の井戸の情報をデータベース化したもので、インターネットを通して誰でも利用できる。
例えば「温度100℃以上」「温水湧出量20リットル/秒以上」「深度100メートル以上」という条件を入力すると、稼働している施設3カ所、計画中の施設4カ所が検索にかかり、それぞれの利用形態(発電、暖房・給湯利用、研究など)、温度、湧出量といったデータが表示される。これらのデータは地質学的な調査結果や現地の最新情報を基に随時追加更新され、地熱利用の質的向上や、地熱探査のリスク軽減に役立ちそうだ。
ドイツの地熱利用条件は必ずしも良くない。また地熱探査には多額の資金がかかり開発にはリスクも伴うが、地熱は枯渇しないだけでなく、環境への負荷が低い、一年を通して安定した供給が得られるといった利点があり、次世代のクリーンエネルギーとしてドイツでも期待が高まっている。
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