バカ売れ! 大人気ガム「Fit's」の販促戦略を学ぶ:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
「噛むンとフニャンフニャン」。佐々木希のフニャフニャダンスCM効果で、ロッテのガム「Fit's(フィッツ)」が品切れになるほどの売れ行きだという。ロッテの販売戦略を分析する。
フニャンダンスの先にあるもの……
新発売は3月下旬であったが、しばらくは交通広告もかなり積極展開していた。そこでも「噛むとフニャン」のコピーと、ダンスのポーズを取る佐々木希と佐藤健のビジュアルがある。
目を引くのは「HOW TO CHEW “Fit's”!!!」と題して「Pick ! Get !! Pull !!!」と、独特のパッケージから取り出して口に運ぶやり方を、3段階に分けて説明しているイラストだ。
わざわざ図解するほどのことか〜? とも思うが、なかなか工夫しているなぁと感心する。昨今のガムは「ガムの新スタイル」と大きく出たグリコのPOs-Ca(ポスカ)のように、口への運びやすさをアピールする傾向があるようなのだ。確かにコモディティ品としては、パッケージは有力な勝負のしどころだ。
などと考えながら、さらに関心が高まり、一度試してみたいなぁと、購入欲求がわく。
この手のパッケージグッズは、「いつか機会があれば購入を!」などといったレベルで消費者の記憶に深く刻み込まれることはあまりない。ゆえに、短期記憶が消えないうちに、購買行動に踏み切らせるのがポイントである。
その意味からすると、交通広告から、駅のコンビニの商品陳列までの導線設計が絶妙だ。JRの駅コンビニ、「NEWDAYS」ではレジ横のスペースをうまく確保していた。
交通広告を見る。乗換駅で、飲料を購入しようとコンビニに立ち寄る。支払いの際にレジに並ぶと、「あら?これは、噛むとフニャンじゃないの?」。バッチリ、購入のアクションまで引きずり込まれた。
広告は楽しかったり、カワイかったりすればいいモノではない。また、商品がアピールできればいいというものでもない。しっかり「購入」というゴールまでの設計がなされていることが望まれる。
「噛むとフニャン」の戦略にしっかりはまった筆者であった。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディ アへの出演多数。 一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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