F1から撤退したホンダが得たものと失ったもの(3/3 ページ)
2008年12月にF1からの撤退を決めたホンダ。そのホンダの後継チーム、ブラウンGPが破竹の快進撃を続けている。撤退するために、わずか1ポンドという価格でチームを売却したホンダは、何を得て何を失ったのだろうか? 撤退後の半年を振り返ってみた。
ホンダが得たもの、失ったもの
今年、日本のF1放送は、トヨタチームと中嶋一貴(ウイリアムズ所属)選手が話題の中心となっている。今季のトヨタは確かに速いが、ブラウンGPには及ばない。また中嶋選手はチームメイトに差を付けられて苦戦中だ。番組で取り上げるときも、どうしても歯切れが悪くなる。
基本的にヨーロッパのスポーツであるF1において、日本メーカーや日本人選手が活躍すれば日本のメディアは当然盛り上がる(大リーグで日本人選手ばかりを応援するのと同じ図式だ)。“ブラウンGP VS. トヨタ”がもし“ホンダ VS. トヨタ”だったとしたら、今季のF1グランプリはそれはそれは盛り上がっていたことだろう。
日本人が思うよりも、ヨーロッパにおけるF1人気は高い。勝ち続けるブラウンGPは、中継でも常に長い時間映っている。テレビ中継やスポーツニュースで「ブラウンGP」と呼ばれる回数と同じだけ、もし「ホンダ」と呼ばれていたら……その広告効果、経済効果は計り知れない。余談だがバトン選手の現在のガールフレンドは、モデルやタレントとして活躍している道端ジェシカさんだ。GPが開催されるたびに、彼女の姿もまた、世界中へテレビ放映されている。もし彼女が今年、海外(とくにヨーロッパ)進出するとしたら、知名度という点ではかなりのアドバンテージがあるはずだ。
もしホンダがF1から撤退していなかったら……終わったことに「たられば」を考えても仕方がないし、ホンダチームが残ったとして、現在の成績を残せていたという保証もない。今の好成績は、メルセデスエンジンのたまものなのかもしれない。しかしタダ同然でチームを売却し、多額の保証金まで払って無理やり撤退したことと引き替えに、本来なら得られていただろうはずの莫大な広告効果を、ホンダが失ったことを否定する人はいないだろう。
撤退すると社長が発表したあと、チームとしても人脈としてもその跡を残すことなく、すっぱりと姿を消したホンダのやり方は、果たして本当に賢かったのだろうか。
ホンダはその潔すぎる撤退劇のおかげで、経済誌や著名評論家が「英断」と評するいう“名”を得るとともに、多大な広告効果という“実”を失ってしまったのではないか? ゴール直後、快哉を叫ぶバトン選手をテレビで見るたびに、筆者にはそう思えてならないのだ。
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