「ドルの罠」に翻弄される中国……それでも“したたか”に:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
イタリアで開かれたG8で日本の麻生首相より存在感を示したのは、会合を欠席した中国の胡錦涛国家主席。新彊ウイグル自治区での争乱事件などの問題を抱えているのに、なぜ中国はここまで存在感を示すことができたのだろうか? その理由は……。
通貨元を国際決済通貨としても使おうという動き
中国は、通貨元を国際決済通貨としても使おうという動きも見せている。ブラジルとの間では両国間の貿易の決済に元とレアルという両国の通貨を使うことを検討しているし、ロシアとの間では部分的に両国通貨を使うことを決めた。
もっともそれで元が国際通貨としての地位を固めることになるとはまだ言えない。SDRにしても、国際的な通貨となるためには、自由に取引できることが必要である。ドルやユーロ、ポンド、円はそういった条件を満たしているが、SDRはまだ中央銀行以外の銀行が取引することはできない。もちろんSDR建ての債券市場があるわけでもない。
元についても同じことが言えるし、まず何といっても、中国人民銀行に対して、世界がどれくらい信用するかはまったく未知数だ。中国自体が、まだ資本市場の論理で動くとは限らないからである。例えば今回の景気刺激策にしても、中央政府の分については支出も順調だったが、半分以上を占める地方政府の分についてはまだ財源手当ができていないという話もある。
さらに2009年に入って、中国の銀行は極端に貸し出しを増やしているが、それは中央からの圧力によるものであって、その膨大な貸し出しがこの先どういった影響をもたらすのかが懸念されている(例えばゾンビ企業が生き残るとか、巨額の不良債権が発生して中国の金融制度が揺らぐといったことだ)。
それでも中国のGDP(国内総生産)は、2009年か2010年には日本を抜いて世界第2位になる。そうなればいよいよ中国は経済においても世界の指導的地位を手に入れようとするはずだ。そのときに日本はどのように行動するのだろうか。為替レートばかりに目を奪われていると、元に飲み込まれてしまうかもしれない。それが日本経済にとって、そして我々日本国民にとって何を意味するのか。じっくり考える必要がありそうだ。
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