事件は白飯の上で起きている! 丸美屋「納豆ごはん専用ふりかけ」のチャレンジ:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
生卵、納豆、キムチ。普段何気なく口にしているご飯の友だが、そこでは今日も、白飯シェアを奪い取ろうと、マーケターの熱い戦いが繰り広げられている。丸美屋の新製品「納豆ごはん専用ふりかけ」から、その様子を垣間見てみよう。
納豆と仲良くして白飯を奪取せよ
しかし、今度の「納豆ごはん専用ふりかけ」は先行商品の代替ではない。筆者は「納豆にはしょうゆ派」なのだが、多くの人は納豆に付属した専用タレを使用する。付属ではない専用タレも発売されているが、ごく少数しかない。そしてプレスリリースによると、今回の商品は添付のたれやからしを入れて、ふりかけを混ぜるだけという使用方法。
つまり、「タダで付いているものを使えるのに、さらにコストがかかるものを使用させる」という、需要創造をしなくてはいけないのが今回のチャレンジなのだ。既にたまごかけご飯がブーム化しており、さらに先行して専用しょうゆが数多く発売されている状況と、納豆ご飯は状況が違う。
しかし、同社があえてチャレンジするのは、もうしばらくは続くと思われる不景気の影響で、食卓では卵かけや、納豆、ふりかけなどが多く使われるという商機を生かしたかったのであろう。「たまごかけには対応した。あとは、納豆に奪われた白いご飯を、納豆の中に入り込むことによって、自社のビジネスの場としよう」という同社の執念を感じる。その執念によって、プラスαのコストを消費者に納得させることができるだろうか。
有望な市場ではある。6月にアイシェアが行ったインターネット調査「食べて満足! ご飯の友ランキング」によると、ご飯にかける好きなものとして、トップは「海苔」60.4%、2位は「納豆」59.7%、3位は「明太子」55.6%。次いで「生卵」が54.3%、「ふりかけ」が52.8%という結果である(複数回答)。
ふりかけを上回る人気の納豆にうまく用いられれば、丸美屋の「白いご飯シェア」はますます上昇するのである。今回は、たまごかけご飯と違い、ブームに乗るのではなく、自らブームを創り出そうとしている。
たかがふりかけ。されどふりかけ。毎日食している白いご飯の上でも、マーケターの熱い戦いが繰り広げられている。そう考えるだけで、マーケティングリテラシーが上がる。何より、毎日の暮らしが楽しくなる。さあ、納豆ごはん専用ふりかけの発売日は8月20日。ぜひ使ってみてほしい。そして、マーケターの想いを感じ取ってみよう。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディ アへの出演多数。 一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
関連記事
- こんな“ユニかぶり”はアリ。消費者のジレンマを解放させたユニクロ
“ユニかぶり”という言葉をご存じだろうか? 他人とユニクロの服がかぶることをユニかぶりと呼ばれているが、「街中ではちょっと避けたい」という人も多いのでは。しかしユニクロが展開するCSR活動は、ステキなユニかぶり現象を生み出している。 - スキマがない……マクドナルドのプロモーション戦略
「クォーターパウンダーを食べて、不況で暗いニッポンを明るい“バラ色”に塗り替えよう!」。日本マクドナルドが展開するプロモーションが面白い。任天堂と組んだ「マックでDS」、安室奈美恵や益若つばさを起用した「日本バラ色計画」。次々と繰り出されるプロモーション戦略の狙いは? - 「家族のブランド」を生かせ! 花王「メリット」の新製品戦略
花王のヘアケアブランド「メリット」が、女児向けのトリートメントを新発売し、好評を博している。ブランドのポジショニングを巧みに生かした新製品戦略を読み解いてみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.