1億本突破! 「い・ろ・は・す」はナゼ売れるのか?:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
日本コカ・コーラのミネラルウオーター「い・ろ・は・す」が絶好調だ。ミネラルウオーターでは最速の97日で1億本を達成したという。確かに特徴のある商品だが、ナゼ、それほどまでに売れるのか?
整合性というマーケタ―の職人技
本当に環境負荷軽減、エコを考えるなら、例え国内取水であっても水道水を浄水して飲んだ方が輸送の環境負荷はかからない。省資源やリサイクルしやすいペットボトルは素晴らしいが、マイボトルを用いてペットボトルを消費しなければ、環境負荷は発生しない。
環境負荷だけではない。マイボトルで浄水した水道水を飲んだ方が、「増量でお得」よりも、もっと自分の財布にやさしい。最近急増している「マイボトル派」なら、そんなことをすぐに考えつくだろう。
「い・ろ・は・す」のポジショニングを2軸のマップで描いてみれば、縦軸がお得感、横軸が環境負荷軽減への貢献となるだろう。「増量でお得で、一番省資源でリサイクルに適したボトル」はミネラルウオーター同士の競合環境では一番有利になる。しかし、「マイボトル」とは比べるべくもない。
筆者も「マイボトル派」で、SIGのボトルにブリタで浄水した水道水を入れて持ち歩いている。だが、正直白状してしまうと、面倒でなかなか実施に踏み切るまでには時間がかかった。実際にそんな人は多いはずだ。
「い・ろ・は・す」の売れる理由。それは、「マイボトルほど面倒なことはしたくない。けれど、環境負荷軽減に関してはやはり気になる」というターゲット層が多いからだ。無理なエコは続かない。何よりLOHASという思想は、「ムリせず継続できること」を重視するものでもあるのだ。その意味で、ターゲット層のニーズをズバリとらえたポジショニングを実現している。
では、急増中の「マイボトル派」がさらに増えたら、「い・ろ・は・す」にとって大きな脅威となるか、ターゲットの成長性はなくなってしまうのかといえば、その点も心配はないだろう。マイボトルを何本も持ち歩けないし、時には忘れたり、荷物が多くて持てなかったりすることもある。そんな時には「マイボトル派」も「い・ろ・は・す」を選択することになる。
マクロ環境・競争環境・ターゲティングとポジショニング・4Pがきれいに整合したことが、「い・ろ・は・す」の快進撃の理由だろう。「それゆけ、次は2億本」というところか。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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