第16鉄 かわいくてかっこ良くて便利な電車――富山ライトレール:杉山淳一の +R Style(4/4 ページ)
2006年に開業した新しい路線、富山ライトレール。富山駅から富山港付近までを24分で結ぶこの小さな電車は、近年日本でも話題のLRTである。富山駅で筆者は思わず感嘆した。なぜなら4年前、この路線は国鉄の面影を残す、ひなびたローカル線だったからだ……。
富山ライトレールはLRT(Light Rail Transit:軽量鉄道交通)の成功例と言われている。自動車交通をLRTに転換することで、Co2の削減や環境の改善、経済的な生活の基盤、コミュニティの形成が成り立つといわれている(参照記事)。だから、地方自治体や国内外の鉄道関係者の視察も多いそうだ。
しかし私が見る限り、富山ライトレールの成功はそんな理屈ではない。このお客さんたちが電車に乗る理由は、社会や環境といったお題目ではない。かっこ良くて、便利で、安いから乗るのだ。感性で人を動かせば、エコロジーやエコノミーなんて、あとからいくらでもついてくる。
富山駅前の街の灯が近づいてくる。それを眺めながら、私はこの鉄道の有り様に感動していた。鉄道のメリットはいろいろあるけれど、まず、かっこ良くなくちゃダメだ。かわいくなくちゃダメだ。乗ること自体が遊園地みたいに楽しくなくちゃダメなんだ。感動したらお腹が空いた。電車内のモニターにラーメン屋さんの広告が映し出されている。よし、あれを食べて帰ろうっと。
今回の電車賃
富山駅北−岩瀬浜 200円 (富山ライトレールは1乗車200円均一)
富山ライトレールを利用できる「富山まちなか・岩瀬フリーきっぷ」は800円。東京から富山へはJRの「北陸フリーきっぷ」がおトク。往復に「新幹線+特急乗り継ぎ」または「寝台特急北陸B寝台(B個室も可)」を選択できる。普通車用2万1400円、グリーン車用2万4000円。
著者プロフィール:杉山淳一
肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」
コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。
趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。
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