ハンズフリーな生き方はいかが? ヘッドセットの新商品を見てきた:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
北欧企業が開発したヘッドセット「Jabra STONE」を取材した筆者。ハンズフリーな生き方に思いをめぐらせているうちに、日本と北欧の生活スタイルの違いに気がついた。
デンマークの生活シーン
トークショーのもう1人のゲスト、Greenz.jp編集長の鈴木菜央さんは、昨年4週間ほどデンマークの知人の家に滞在した。そこで感じたのは、「デンマークは至るところにデザインを楽しむ生活がある」ということ。
アマンダさんも「冬が長いデンマークではインドアでゆっくり語らいを楽しむ習慣があります」とうなずき、2つの代表的なデンマークデザインを紹介した。コーヒーを保温する「Stelton Thermo jug」と「‘Don't leave me' table(「1人にしないで!」という名前の携帯用テーブル)」という作品に、デンマークの豊かな生活シーンを思った。
「デンマークの良さは生まれても安心。教育も安心。死ぬまで安心なところ」と鈴木さん。
福祉国家として知られるデンマークでは、出産は無料、大学までの学費も無料、さらに年金も充実しているので“生まれてから死ぬまでずっと安心”だという。反面、所得税は高く(個人収入の約5割)、消費税も25%。だが、国が国民の面倒をみるので、貯蓄が少なくても生きていくことができる。言わば、“手ぶらで生まれて死ぬ”ことができる国なのだ。
ハンズフリーのもうひとつの意味
ひるがえって日本はどうか。出産は有料、教育費は幼児から高額、年金はぶっ飛びそう。雇用は不安定で、生活も不安だらけ。
ハンズフリーのもう1つの意味は「手ぶらで生きる」。デンマークは手ぶらで生まれて死ねるが、日本では手ぶらというわけにはいかない。日本では預貯金をしていないと不安だし、年金も保険も自らかけていないと不安な人も多いだろう。
生活スタイルもそうだ。日本では歩きながら電話で話し、メールやチャットをするスタイルがフツーである。手ぶらで生きることができない国、ニッポン。DSや携帯をいじくりながら歩く姿は前屈みで姿勢も悪い。アブナいしハタ迷惑。どうして背筋を伸ばしてハンズフリーで歩けないの?
日本は生活を豊かにするためのソフトが少なく、生活シーンを楽しむ余裕がなかなかない。そのため、携帯機器でさまざまな機能をいじる方にいきがち。日本の商品開発が機能重視になるワケはそこにある。だがこれからのマーケティング、機能面の商品開発だけでは活路がないのではないだろうか。低価格品で海外を攻めるだけでもない。価格と機能に続く第3の活路は“生活”である。
日本の商品デザイン、手元を忙しくする機能開発から、生活を楽しむ手ぶら商品開発に転換できるだろうか。
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