スタバ、インスタントコーヒー発売の危険な賭け(3/3 ページ)
その名を「VIA(ヴィア)」という。スタバが米国で新発売したインスタントコーヒーである。あえてカニバリゼーションにつながりかねない商品展開に踏み切った背景は何なのだろうか?
プライシングにうかがえる苦労の跡と隠された狙い?
スタバほどの企業が行き当たりばったりにいろいろな施策を打つわけはなく、そこはきちんと考えられているはずだ。しかしヴィアのプライシングには苦労の跡がうかがえる。そもそも1杯分が1ドル弱というのは、インスタントにしてはあり得ないほど高い。
簡易ドリップ式のコーヒーでさえ、日本ではだいたい1杯当たり50円が相場なのだ。スティックタイプのネスカフェなら1杯35円である。スタバのインスタントコーヒーがべらぼうに高いことが分かるだろう。
だからヴィアの価格はおそらく、相当に考え(悩み)抜かれた末のプライシングだとは思う。もちろんネスカフェほどの大量生産はできないだろうから、そもそもの原価に違いがあることは想像はつく。が、原価レベルで3杯もの差はないだろう。
このプライシングの背景として考えられるのは、味には真剣に自信があるということ。だからネスカフェには3倍ぐらいの価格差なら絶対に勝てると踏んでいるのだ。そして、それほどの自信作であるがゆえに、店で売る(出す)コーヒーとのカニバリゼーションも実のところは覚悟している。
だからあえて通常なら考えられないほど高い値付けを選んだ。店で飲むのと変わらない味だから、店の売り上げは下がるが、ネスカフェのシェアを分捕ればスタバトータルでの売り上げは維持できる。そんな読みがあるのではないか。
インスタントスタバの売り上げが伸びていけば、不採算店はどんどん閉鎖してコストカットに励めば良い。まさか、そこまでは考えていないのだろうが、今回のスタバの新商品はいろいろな思考実験を伴っているようで、その結果が非常に興味深い。
もう1つ。サードプレイス感を失いつつある日本のスタバは、どうなるのだろう? だからこそ日本ではヴィアは販売されないということなのだろうか。(竹林篤実)
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