ビジネスマナー研修に効果がない理由
エンジャパンの調査によると、企業が社員研修として実施しているコンテンツ、やりたいと思っているコンテンツはビジネスマナーであるとのこと。しかし、「実はビジネスマナーを研修で学ぶのはとても難しい」と筆者は主張する。それはなぜなのだろうか。
著者プロフィール
川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
1988年リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。人事専門誌・業界誌・一般誌などにも人事関連分野で多く取り上げられていただき、ラジオ番組のレギュラーを持っていたこともあります。京都大学教育学部卒。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
エンジャパンの調査によると、企業が社員研修として実施しているコンテンツ、やりたいと思っているコンテンツはビジネスマナーであるようです。業種などによって、かなり違いはあるのでしょうが、客がうるさくなってクレームも増えていること、特に現場で働く若者のビジネスマナー以前の常識(態度や振る舞いや言葉遣い)のなさ、といったことが背景にあるのだと思います。
企業の経営者や幹部の方々と話していても、現場の人たちのマナーを不安がっている人は多く、かといって放置しているのではなくて、「ちゃんとマナー研修を実施しているのに、どうも効果がない。マナーがなっていない者が多い……」と言われます。
ビジネスマナーを研修で学ぶのはとても難しい
実は、ビジネスマナーを研修で学ぶのはとても難しいことです。
身だしなみ、表情や姿勢、名刺の受け渡し、電話対応、席次、メール・手紙・文書といったことのスタンダードを知ることは簡単なのですが、それが、1.自分がやっている商売に、2.自社のカラーやカルチャーに、3.自分のパーソナリティに、マッチしているかどうかは別問題だからです。実際に自分が客の立場になった時のことを考えれば、求められるビジネスマナーは、状況によってかなり異なると気付くでしょうし、ちゃんとしたマナーでも大して好印象を受けないこともあるでしょう。
ですから、企画側はその辺りをよく含んで実施する必要があります。客室乗務員やホテルの出身者にすごいマナーを教えてもらうことが本当に良いのか。それらと自社のビジネスの違い、お客さまとの出会い方や目的はどう違うのかを考えた上で実施しなければならないということです。地域の違いもあるでしょう。例えば、東京では「すいません」は禁句と教えられますが、大阪では軽いあいさつからしっかりした謝罪まで「すいません」を幅広く使います。
研修では、特に若い受講者は「正しさ」を求めます。ビジネスマナーの教え方も、「こういうのは恥ずかしい」「こういうのはNG」と言いながら、「間違い」をしないようにさせるパターンがほとんどです。そうやって型にはめていくのが本当にいいのかどうか。役に立つのかどうか。
ビジネスマナー研修は、自社のビジネスを理解している人、自社のカラー・カルチャーを知っている人が、各々のパーソナリティを生かすように進めるような内容であるべきと思うわけです。(川口雅裕)
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