「必要なのは才能発掘の次のステップ」――日本のアニメ業界に足りないもの:コミックマーケットシンポジウム(4/4 ページ)
動画サイトでの投稿をきっかけに、注目を集めるアニメーション作家が登場するようになっている一方、日本ではその先のプログラムが整備されていない。12月30日、コミックマーケットで行われたシンポジウムで、東京藝術大学大学院の岡本美津子教授が、日本のアニメーション作家のキャリアパスについて語った。
日本発コンテンツを創出し続けるための3つのポイント
岡本 日本発コンテンツを創出し続けるためのカタパルトシステムを整えるに当たっては、重要なポイントが3つあると思います。
1つ目は、海外のマーケットに目を向けるということです。先ほど申し上げたように、少子化や不景気の影響もあって、日本のアニメーションの本数は減っています。そこで、国際共同制作ということがアニメーション制作の世界で潮流になりつつある。つまり、「広く海外に資金とマーケットを求めてはどうか」ということになっています。
今、アジア各国のアニメーション業界は全部中国を向いています。この前、香港のシンポジウムに行ったら、「中国に一番近いのは自分たちだ。そこがアドバンテージだ」という発言があったくらいです。ただ、そうしたところで日本のアニメーション監督は非常に重宝されるので、進出していかなければいけないのではないかと思います。
2つ目は、プロジェクト単位の小規模助成が必要だということです。今、文化庁には映画の制作活動への助成金があるのですが、これは助成対象経費1000万円以上からということになっています。しかし、先ほど申し上げたようなカタパルトプログラムでの短編アニメーション制作は、数百万円でも十分できるわけです。そういった小さいプロジェクトを支援して、多くの人にチャンスを与えられるような助成の方法もあるのではないかと思うのです。
例えば、『つみきのいえ』以前(2007年)にアカデミー短編アニメ賞を受賞した『THE DANISH POET』はカナダとノルウェーのプロダクションの合作で、それぞれが助成金を持ち寄って作ったものです。そういった例も増えるように、小規模助成を増やしてほしいなと思っています。
最後に、プロデュース機能の活性化です。ディレクター(監督)の才能を発見したり、予算をつけて制作進行を管理し、社会とつないだりするのは、プロデューサーの役割です。そういったプロデューサーはまだまだ日本に少ないし、その中でもフリーとして活躍できる人はもっと少ないです。国際共同制作をやっていくのも、プロデューサーの役割なので、そういったプロデュース機能を充実させていくことが必須だと考えています。
関連記事
- コスプレサミットからカワイイ大使まで――外務省のポップカルチャー外交
外務省ではトップレベルでの折衝などとは別に、他国民に直接アプローチすることで対日感情を好転させるパブリックディプロマシー(対市民外交)という試みも行っている。12月30日、コミックマーケットで行われたシンポジウムで、外務省中東アフリカ局中東第二課長の中川勉氏が漫画やアニメなどを利用したポップカルチャー外交の現状を語った。 - アニメを“絵空事”にしないために――『サマーウォーズ』のロケハン術
文化庁は10月22日、東京国際映画祭のイベントとして「ヒットアニメに学ぶロケハン術」を開催、8月に公開されたアニメ映画『サマーウォーズ』の細田守監督が、東京藝術大学の岡本美津子教授や信州上田フィルムコミッションの原悟氏とともにアニメにおけるロケハンの重要性について語った。 - 映画はこうして作られる――映画プロデューサーの仕事とは(前編)
映画やテレビドラマなどを制作する上で大きな役割を果たすにも関わらず、監督に比べて地味な存在と思われがちなプロデューサー。プロデューサーの仕事とはどのようなものなのか、東京ディストリビューション・オブ・コンテンツセミナーでGONZOの内田康史氏が語った。 - 20代アニメーターの平均月収は10万円以下――アニメ産業が抱える問題点とは?
日本アニメーター・演出協会(JAniCA)は5月22日、東京大学で「JAniCA シンポジウム2009」を開催、700人を超えるアニメーターの協力を得た業界調査の報告をするとともに、アニメーション産業の置かれている状況を題材としたパネルディスカッションを開催。その模様を詳細にお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.