その善意は伝わらない?――ハイチ大地震に見る企業の社会貢献(2/2 ページ)
ハイチ大地震をうけ、カリブ海に近い米国では、企業からもさまざまな支援の手が挙がっている。しかし、支援に関する情報がソーシャルメディアを駆け抜けるうちに「一人歩き」を始め、せっかくの善意が正しく伝わらなかったり、あるいは人々の誤解が原因となって、予期せぬ非難や失望を招いてしまったというケースもあるようだ。
後から発表された支援に埋没してしまった
ノースウェスタン大学のビジネススクールでマーケティングを教えるカルキンス教授は「こうした大規模災害は、企業ブランドの価値を高める千載一遇のチャンスである。ただし、そのためには、素早く行動を起こすこと、そして、やると宣言したことは必ず実行する誠実さが肝要である」としています。
ところが、このセオリー通りにアクションを取ったにもかからず、あまり報われなかったのがAT&Tのケースです。同社は、地震発生直後、自社の携帯電話ユーザーに対し「メールで寄付を表明すれば、その金額を毎月の利用料と合わせて請求する」という声明を発表しました。ところが、その後、ほかの携帯キャリアも相次いで同様のサービスを発表したため、真っ先に声明を発表したAT&Tの存在がかすんでしまい、ついにはTwitter上で「なぜAT&Tは、ほかの携帯キャリアのようにハイチ支援に動こうとしないのか?」といった非難を受ける事態にまで発展してしまいました。
このため、AT&Tでは、そうした誤解を打ち消すために、後日、「携帯電話ユーザーからハイチに対して行われた寄付のうち、半分近くは AT&Tの利用者からのものである」という声明を発表することになりました。
支援の「適正な規模」を決めかねた
食品大手のクラフト社は、地震のニュースを受け、ハイチに対して2万5000ドル(約250万円)の寄付を行うと発表しました。ところが、同じタイミングで競合他社からは、クラフトよりも1ケタ多い25万ドル(約2500万円)規模の支援が相次いで発表されたため、相対的にクラフトの支援は見劣りする結果となってしまいました。このため、クラフト社では、急遽、会社が運営する基金から50万ドル(約5000万円)の追加支援を行うと発表しました。
前出のカルキンス教授も「支援を行う場合、競合他社と同水準もしくはそれ以上のものを検討することが必要である」とする一方で、「絶対額においても、(会社の規模や業績などに比して)あまり安いと思われる支援を発表することは得策ではない」と忠告しています。特に、高額のボーナスに対する批判にさらされている金融業界などは充分な注意が必要でしょう。(泉浩人)
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