ドキュメンタリー映画『TOKYO TO OSAKA』が伝える“ピストバイク”の魅力:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
13人の米国人たちが、渋谷から大阪まで自転車で駆け抜ける姿を追いかけたドキュメンタリー映画『TOKYO TO OSAKA』。その中で彼らが乗っていた「ピストバイク」の魅力とは何なのだろうか。
バイク meets Japan
監督は『バイシクル・フィルム・フェスティバル』(自転車映像作品を集めた国際イベント)に通いながら、いつか自分の映画を出品しようと思った。それも長年自分の身体の一部でもあるフィックスドギア・バイクのフィーリングを伝える映像で。
「米国内のいろんな街に住む友人に『やらないか』ってメールを出したんだ。ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、テキサス。だいたい20代で、学生やアーティスト、デザイナー、科学者、ミュージシャン、みんなバイクの愛好者。それで集まった12人さ」
人種はいろいろ、職種もいろいろ。その12人を撮影担当、モーターサイクリスト(撮影者同乗用バイク)、車両運搬担当、そして監督の4人で撮影。日本の異文化に遭遇し、競輪場のホンモノに触れ、サドルを並べて走った。日本のサイクリストたちもたくさん登場。彼、彼女たちとの交流もバイクという“世界共通語”があるゆえ。
「どこが最も大変な道のりでしたか?」
「日本の道はとても安全で走りやすいね。でも、雨の日の狭いハイウエイはつらかった。自動車やトラックに幅寄せされて、水がはねるし。左側はハイウエイの壁や断崖絶壁、あるときは田んぼだった」
特にキツかったのは奈良の山道。アップダウンの繰り返しで、音を上げそうになった行程だった。20数段あるロードバイクだってキツいと思う。それがたった1つの固定のギア比なのだから、当たり前だ。なぜそんなバイクで長距離を行くのか。
フィックスドギアの魅力
「13台のバイクはどんなタイプ?」と問うと、「Chinelli(チネリ)」「Fuji」「GT」「Somec(ソメック)」「Orbea(オルベア)」「De Bernardi(ベルナルディ)」「Felt(フェルト)」と返答あり。フレームだけで何十万円もするものばかり。ギアレシオもカスタマイズ。ビジネスサイトのインタビューでこんな質問をする私はどうかしているが、許してくれたまえ。余談だが私の乗るアマチャリ(多段ロードバイク)、バーテープだけチネリだ。
「フィックスドギア・バイクの良さとは何ですか?」
「ダイレクト・フィーリングだね」と監督。
自転車の原形とも言えるシンプルな2枚のギア、そぎ落したシルエットが生み出す走行フィーリング。自分の足が回っただけ前に進む、道路が自分のものになる一体感。「本来、プロ向けの固定ギア車がここまでアマチュアに広がったのは、自転車の起源、その文化に“直接触れたい”気持ちからじゃないか」と監督は言う。
「住んでいる町で長距離を走れれば、350マイルも走れる。その向こうの海外に行くのも自然なことさ」
池袋から渋谷までせいぜい片道5マイル。でもその5マイルは次の10マイル、50マイルに通じる。350マイルを35分に凝縮したドキュメンタリー映画が、世界中にダイレクト・フィーリングを広める。私もすっかりピストバイクに“フィックスド(ハマった)”されてしまった。
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