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コラム

アップルのアンテナトラブルが問う「廃れないブランド」の条件(2/2 ページ)

アップルはこれまで「反体制」「非主流派」「挑戦者」というかっこいいイメージで売ってきた。しかし、iPodが「一家に3台」といえるくらい普及し、時価総額がマイクロソフトを超え、世界最大のIT企業として君臨した今、アップルのブランド・イメージはどうなるのか? 大きくなっても、主流化しても廃れないブランド力とは?

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廃れないブランドの核とは

 冒頭に挙げた日経記事の終わりの方に、「人気が拡大するほどブランド力を失う危機が高まるというパラドックス」とある。

 これを読んで思った。「人気が拡大すると……」というのをどう定義するかは疑問だが、会社の規模が大きくなったり、モノやサービスが主流化したときに壊れてしまうブランド力というのは、そもそもその力が実体を伴わないイメージに依存しているからではないだろうか。

 庶民は往々にして、挑戦する者に加勢したくなる。一番手になってしまったら最後、応援のしがいがなくなる。また、どんなに画期的なモノやサービスでも、普及してしまったら当たり前になり、新鮮さや面白みを失う。こういう例は珍しくない。

 アップルが「アンチ・エスタブリッシュメント」であり、「革命的」であり、「自由」であり、常に「開拓者精神」を持ち続けるブランドとして信奉され続けるかどうかは、単に「画期的なモノ」を作り続けることができるか否かではなく、まさにアップル社という共同体の1人1人が、そういった文化や精神、あるいは魂を持ち続けることができるか否かにかかってくるだろう。

 アップルの内部事情については知らないので、アップルのブランド力が単なるイメージに依存するものなのか、あるいは筋の通った、実体を伴うものなのかどうかについて私が判断することはできない。しかし、その判決は市場が、顧客が下してくれるだろう。

 それにしても、前述のiPhoneのトラブルについて、「ほかのスマートフォンにも起こること」と言ってしまうあたり、「我々の知るかつての『アップル・スピリット』にすでに反するんじゃないの」と個人的には思ってしまった。「反体制」であり、「挑戦者」であり、「とんがった」アップルであるからこそ、「iPhoneはほかのスマートフォンとは違う」と突っ張り、問題の徹底的な追及を約束して欲しかった。

 かくいう私もiPadにはぞっこんほれ込んでいる熱狂的ユーザーであり、商品開発者としてのアップルの先進性、画期性はまだまだ健在だと信じる。しかし、ブランドはモノでもなければ、看板でもない。だからこそ、アップルのブランドを背負うスティーブ・ジョブズCEOを始めとした、アップルの中の人々が、その行動や言動をもってアップル・ブランドを生き抜いてほしいものである。「廃れないブランド」の核とは、そこにあるのではないだろうか。(石塚しのぶ)

 →石塚しのぶ氏記事バックナンバー

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