日本は中国の軍事的脅威に対抗できるのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
沖縄の基地をめぐって日米の根深い対立があることを利用して、中国海軍の動きが活発化している。「日本と米国が普天間問題にとらわれ、現実的な問題について議論する時間がなくなっている」と懸念する米国。日本の軍事の未来について、日本のトップはどのような考えを持っているのだろうか。
自衛隊だけで離島は奪還できない
この離島を占拠する「仮想敵国」は中国だ。読売新聞によれば、防衛省幹部は「中国に対し、日本は南西諸島を守りきる意思と能力があることを示す」と語っている。
しかし明白なのは、自衛隊だけで離島を奪還するのは限りなく不可能に近いということだ。だからこそ米軍との共同訓練ということになるが、そこに影を落としているのが普天間基地移設問題であるということだ。
最近、しきりに米国側から流される懸念は、「日本と米国が普天間問題にとらわれ、現実的な問題について議論する時間がなくなっている」ということだ。そしてこの間隙を縫うように中国海軍が活発な動きを示している。
この普天間問題をぶっ壊してしまったのは、鳩山前首相である。これが外交上、安全保障上にどれだけの損失を与えてしまったのか、鳩山前首相や菅現首相はお分かりになっているのだろうか。そう思ってしまうのは、政界を引退すると言っていた鳩山さんがこのところ何かと発言していることや、菅総理は普天間問題を安全保証の観点から国民や沖縄県民を説得しようとするスタンスが感じられないからである。
政治とは政敵や国民を説得することだと思うが、この観点からすると安倍さん以降の総理はいずれも落第点しか与えられない。果たして菅総理はどうなのだろうか。もし力強いメッセージを発信することがあるとしても、代表選以降。世界経済も中国海軍も、それまで待ってくれるのだろうか。
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