タマネギから風邪薬まで――コンビニがいろんな商品を扱うワケ:ローソンを“研究する”(2/2 ページ)
店舗数が飽和しているため、客層の拡大が課題となっているコンビニ業界。ローソンでは、生鮮やヘルスケア、店内調理などに取り組むことで、これまで店舗に来なかった客層を獲得しようとしている。
生鮮販売への参入
また、主婦層を取り込むために始めたのが生鮮の販売である。2005年にスタートしたローソンストア100で生鮮を扱うようにしたのだが、最初は失敗した。
「1号店の出店初日は80万円の売り上げを記録したのですが、1週間後には20万円にまで落ちて、損益分岐点の40万円を大きく下回ってしまいました。ローソンストア100では105円の生鮮を販売していたのですが、105円の商品をただ集めてきただけだったので、魅力に乏しかったんです」
そこで、後に子会社となるSHOP99(九九プラス)のPBを参考にして、商品力を強化。また、「高かろう、悪かろう」というコンビニの生鮮のイメージを変えるため、当日に収穫した野菜を午前中に入荷、核家族や1人暮らしの人でも利用しやすいように小分けサイズで販売した。
そして9月には、野菜を安定供給するために、千葉県香取市の芝山農園と共同出資で農業生産法人ローソンファーム千葉を設立。関東地区のローソンストア100(650店)と野菜の取り扱いのあるローソンプラス(250店)へ、小松菜や大根、人参、ほうれん草などを供給することとなった(参考記事「ローソンが農園の経営に――“誠実短小”の生鮮物流への挑戦」)。
コンビニでもできたて感を
店舗数が頭打ちになっているコンビニ業界だが、既存商品の売り上げでも頭打ちになっているものがある。その代表的な存在が弁当で、多くのコンビニではここ数年、前年の売り上げを上回らない状況が続いている。
「コンビニ弁当は誤解を恐れずに言うと、目的として買われる人があまりいないんです。忙しいから買うという人がほとんどで、時間があったら外食したり、家で料理して食べたいという人が多い。コンビニ弁当は冷えてもおいしいようにしたり、良い食材を使ったりと工夫しているのですが、やはり“できたて感”には負けるんです」
そこで、2004年から試行錯誤を重ねて、今年6月にスタートしたのが店内調理である。神戸物産と提携して、「ライブキッチン」(客の注文を受けてから目の前で調理)、「彩りビュッフェ」(さまざまな料理の盛り放題サービス)、「できたて弁当」(昼食などのピーク時間に用意する店内調理弁当)の3種類のメニューを提供。注文後3分以内に提供することを心がけたことなどによって“できたて感”を求める客層を取り込み、1日に平均300食売り上げる人気メニューとなった。
未来のコンビニの形は?
かつては「家の近くにある24時間営業の店舗」という“便利さ”を売っていたコンビニ。しかし、時代の要請に合わせて、そのあり方も変化している。宮崎氏に未来のコンビニの形を尋ねると、「もしかするとレジが自動化されて、店員は接客に専念することになるかもしれませんね」と笑う。
これからのコンビニには何が求められていて、どう変えていくべきなのか。コンビニ業界の試行錯誤の旅はまだ道半ばである。
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