カネを返せなくなった……この人は本当に“弱者”なのか:ちきりん×磯崎哲也のマジメにおちゃらける(5)(3/3 ページ)
人気ブロガー・ちきりんさんと磯崎哲也さんによる対談連載5回目。消費者金融などからお金を借りたものの、何らかの理由で「返せなくなった」というケースは多い。「借りた人=かわいそう、貸した人=悪」を強調する人がいるが、この考えに磯崎さんは異を唱えた。
消費者金融を誤解している人が多い
磯崎:そもそもお金を借りるという行為を誤解している人が多い。お金を借りている人が「返済できなくなってしまったらかわいそう」「業者が悪い」といった話になりがちなのですが、よくよく考えてみると彼らの方が約束を破っているわけです。お金を借りるときに「必ず返します」と約束したのに、その約束を破ってしまった。「返せます」といって借りたのに、返せない人の方が“かわいそう”と思われている。これは、よくよく考えてみると、ちょっとおかしいですよね。
ちきりん:確かにおかしいですよね。
磯崎:また「サラ金からお金を借りる人って、失業者や路上生活者みたいな人たちでしょ?」と思い込んでいる人も多い。しかし失業してる人や、路上生活を送っているような人は定期的な収入がほとんどないので、そもそも借りることができないんです。
「サラ金=サラリーマン金融」というのは名前の通り、サラリーマンという安定した収入がある人にお金を貸す――というコンセプトで始まった。「団地金融」なんて言い方もありました。1960年代当時ハイカラだった「団地」に住んでいる人は、一般の人より平均年収も高くて収入も安定している人が多かったので、そういう人を顧客ターゲットにしたわけです。恐らく今でも、水商売をしている人やタクシーの運転手は、消費者金融でお金を借りることはかなり難しいと思います。だから消費者金融の顧客は、堅気な仕事をしているごく普通の人たちが大半です。1980年代に見たデータだと、社会人の半分以上が消費者金融こうしたことを知っている人は少ないですよね。
→続く。
ちきりんさんの対談バックナンバー
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著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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