バナナから激安PB飲料水まで――自販機不況脱出のカギを考える:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
自販機商品の売上減が止まらない。10年間に比べて売り上げが25%も減少する中、自販機でバナナやカットりんごを売るなど、新たな試みも登場してきている。どうすれば自販機での販売を盛り上げることができるのだろうか。
業界の殻を破ろう
そんな中、固定マージン+自社ブランド飲料で伸びる中小オペレーターもいる。2リットル69円のプライベートブランド飲料水を自販機販売するスーパードリンクは、オーナーに払う場所代を固定にして、売れば売るほど自社収益を増えるようなビジネスモデルに特化している。自社でリスクを取るのは、同社が自販機業界ではなく飲料水卸、安売り店舗も運営する業界アウトサイダーだからこそできる戦略だ。
深まる自販機不況、「誰もリスクを取らない」ことが販売改革を停滞させてきた。設置さえすればお金が回る不思議な業界構造だから、猫さえ通らない田舎道にも自販機があるという妙なことが起きる。自販機不況の原因はデフレだけではない。
そこで、飲料市場以外に活路を見出してはどうか。ドールやエム・ヴイ・エム商事は、業界のアウトサイダーどころかフルーツを扱う会社である。バナナもりんごもできるなら、カット野菜や焼き立てメロンパン、ほわほわシュークリームも売れそうだ。自販機メーカーは異業種提案をすべし、異業種も自販機業界に提案をすべし。
消費者のロマンから考えよう
私のようなおじさん世代が自販機を見ると、1970年代にあった「お湯を入れられるカップめんの自販機」を思い出す。カップめんを買うと、その場で自販機からお湯を注げる。温かい自販機だった。お湯の温かさだけではない。自販機がこう語ってくれたのだ。
「入れたぜ、3分待てよ」
実にロマンがあった。自販機はもっと消費者のことを考えられる。例えばサイクリングロードやジョギングロード沿道に「消耗した? ひと息つこう自販機」はどうか。スポーツ飲料やバナナ、カロリーメイトや冷たいおしぼりを買えるとうれしい。クリニックや薬局の側には「お大事に自販機」、高カロリー飲料やカットりんご、おかゆがありがたい。駅のホームなら「郷里のおふくろ自販機」、故郷の特産物の個装がずらり。ホームの端っこには「人生これからだ自販機」で、1人さびしく食べられるアンパンを売ろう。オフィスビルには「熱くなるなよ自販機」を管理部門、「燃えろよ自販機」を営業部門の休憩室に。
ロマンのない消費はつまらない。ロマンがなくなる時、事業は不調になる。
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