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「人間は強いですから」――復興にかけるトラックとコンビニの物語郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)

東北地方を中心に大きな被害を与えた東日本大震災。被災直後の混乱の中、ローソンの依頼を受け、すぐに現地に向かったのがレントラ便を運営するハーツの山口裕詮社長だ。彼が現地で見たものとは……?

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「人間は強いですから」

 ローソンの宮城県対策本部から「オニギリを現地で作りたい」という声があがった。東北地方の5工場のうち4工場で3月15日までに電力が復旧したのだ。問題は不足する燃料と材料の輸送。九州の加盟店オーナーからタンクローリーを借りて、燃料を運ぶメドをつけた。3月15日に米や具材の原材料と燃料を運んだ。ちなみに具材は腐りにくい昆布、おかか、梅に限定。明太子はムリだ。

 ローソンの3月15日の店舗状況は↓まで回復していた。

県名 店舗数 営業店舗数 休業店舗数
宮城県 165 130 34
岩手県 161 123 38
福島県 96 76 37

 2日前よりも劇的に改善した。3月17日には、航空自衛隊輸送機で救援物資のオニギリとパンを小牧基地(兵庫県伊丹市)から福島空港まで輸送。3月18日には店舗の耐震状況の調査のため、建築専門家も派遣した。仙台空港そばの物流センターの被災の影響は大きかった。低地の物流センターは今後見直しするという。

 早期の開業は現場の努力だけでなく、東京の対策本部の努力もあった。店舗状況把握と支援調整、物資調達、節電対策、工場間調整、さらにマスコミ対応など押し寄せる業務。毎日毎日、深夜24時前後が本部の終業時間だった。

 一方、山口さんは3月17日、陸前高田市にいた。3度目の現地への物資輸送である。そこで見たものはコンビニではなく、瓦礫だった。


撮影:山口裕詮さん

 彼は言葉を失った。何もできず立ちつくす地元の人を見て、また言葉を失った。このローソンだけでなく、山口さんは気仙沼市のセブン-イレブン、大船渡市のファミリーマートなど瓦礫の中の店舗をいくつも見た。瓦礫か店舗か分からなかった。ここから立ち上がることができるのだろうか? だが、あるローソンの加盟店オーナーはこう言ったのだ。

 「人間は強いですから」

 「瓦礫の中からでもできる」と。加盟店オーナーは地元の顔である。雇用にも販売にも責任を持つ。商品と人を結ぶ地元のハブである。だから電気が無くても、懐中電灯で自力営業もする。だからできる。いや、やるのだ。


撮影:ローソン

意地こそ原動力

 山口さんは4月1日までに、東北へ7回、被災者の避難先の河口湖も入れれば8回の物資輸送をしている。福島県に入るたびに熱いものがこみあがる。物資は供給が増えれば何とかなる。だが、すぐにどうにもならないこともある。山口さんはブログとFacebookでこう宣言した。

 「福島原発から半径30キロ以内は無料で運搬します

 ローソンも熱い。この状況下でUchiCafe SWEETSの新製品、予定通り3月29日に発売した。


3月29日発売のプレミアムチーズケーキ

 「担当者が意地で出しました」

 この取材を私は別々のものとして行った。過去の2つの記事(ローソンのロールケーキレントラ便)の縁があって、被災時の様子をうかがおうと思ったのだ。ところが、くしくも両者は東北でつながっていた。熱さは熱さを呼ぶ。国難だからこそ、1人1人再興へ意地を見せよう。

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コンビニ | 福島県 | ローソン | 宮城県 | 物資 | 地震


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