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コラム

震災を機にジャストインタイム生産は見直すべきか?(2/2 ページ)

東日本大震災の影響でサプライチェーンが寸断され、多くの企業が供給停止になっていることを受け、効率・利潤追求を目指し在庫を極限まで減らすジャストインタイムの弊害が喧伝されている。果たして、震災を理由にジャストインタイム生産を見直し、在庫を積み増すべきだろうか?

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解はすべての企業に共通ではない

 この問題への解はすべての企業に共通ではない。対面している顧客のニーズによって異なってくる。例えば、安定供給に価値を置く顧客であれば、たとえ多少のプレミアムを払っても(価格が高くなっても)、工場を地理的に分散させる、在庫を多めに持つといった危機対策を取ることでオペレーションコストが高くなっている企業を選ぶだろう。コストを重視する顧客であれば、「危機対策をするように」と口では求めても、結局は価格競争力のあるサプライヤを選ぶものだ。

 大切なのは、自社がどういった顧客をターゲットにし、ローリスクローリターン、ミドルリスクミドルリターン、ハイリスクハイリターンのどのレベルでオペレーションの効率とリスクマネジメント、危機対応とをバランスさせるのかということについて分かって経営することだ。それがないと、商品開発→設計→営業→計画→生産→調達→物流のすべてのオペレーションがバラバラとなり、結局どの顧客のニーズにも応えられなくなり、地震で被災する前に淘汰されてしまう。

 トヨタ自動車で部品調達を担当する幹部は、震災後のジャストインタイムの見直しについて、「寸断されたらみんなで協力して復旧すればいい。有事の際に費用が掛かっても、平時部品在庫をたくさん持つよりコストは安い」(出所:日本経済新聞2011年4月4日17面)と答えている。

 そもそもジャストインタイムを選ぶべきか否かは各社のあるべきビジネスモデル次第だし、「寸断されたらみんなで協力して」という考え方に甘えやおごりが感じられないでもない。それでも、自分が何をしているかをしっかりと認識した上で、それに基づき何をすべきかを判断するというこのトヨタ自動車の幹部の姿勢については、経営やオペレーションで意思決定に携わる者すべてが見習うべきだ。

 人は身近なもの、直近で起こったことを過大評価しがち。震災で動揺、混乱が広がっている今だからこそ、地に足のついた意思決定を心掛けたい。(中ノ森清訓)

 →中ノ森清訓氏のバックナンバー

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