児童、生徒、避難住民が共存する小学校――陸前高田市(3):東日本大震災ルポ・被災地を歩く(2/2 ページ)
陸前高田市広田町は津波による浸水で、震災後3日間孤立してしまった地域だ。高台にあった広田小学校は被害を免れ、地区の避難所になっている。さまざまな人たちが集う、広田小学校の始業式を取材した。
2週間遅れの始業式
2週間遅れとなった始業式は玄関ホールで行われた。2〜6年生の児童116人が整列し、式の前に震災の犠牲者に黙祷を捧げた。
始業式で松村校長は「学年が1つ上がって、今日からいよいよスタートです。おめでとうございます。家を失った人、消防団員、ボランティアの人たちが支え合っています。皆さんの協力で学校を再開できました。こういうときこそ、踏ん張ろう」と話していた。
児童たちは、真剣に話を聞いていた。子どもたちに、震災は巨大な爪痕を残した。家族や家、思い出の風景、品物が失われた人もいる。こうした経験をした小学生には、いろんな感情が渦巻いているのだろう。
カメラを向けると明るく振る舞う子どもたちがいる一方で、感情をうまく表現出来ないかのような表情をしている子どもたちもいる。いずれにしても、悲しみや嘆きなどの感情がうまく処理できるのであれば、今そうした感情が渦巻いていても、いつかは平常心に戻っていけるかもしれない。そのために、学校は何ができるのか。また、私たちに何ができるのかを考えていかなければいけないと思いつつ、子どもたちが高らかに歌う校歌に聞き入っていた。
始業式が終わると教室に戻り、今後の学校生活の説明などがあった。そして放課後になると、教員たちは子どもたちの下校に付き添った。この日、広田小学校には桜が咲いていた。桜が咲く時期での始業式は、この地域では珍しい。
翌日、入学式が行われた。広田小学校の新1年生は25人だった。(続く)
渋井哲也(しぶい・てつや)氏のプロフィール
1969年、栃木県生まれ。フリーライター、ノンフィクション作家。主な取材領域は、生きづらさ、自傷、自殺、援助交際、家出、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪など。メール( hampen1017@gmail.com )を通じての相談も受け付けている。
著書に『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎)、『解決!学校クレーム』(河出書房新社)、『学校裏サイト 進化するネットいじめ』(晋遊舎)、『明日、自殺しませんか?』(幻冬舎)、『若者たちはなぜ自殺するのか?』(長崎出版)など。メールマガジン 「悩み、もがき。それでも...」を刊行中。
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