座席のデザインで意識させずにマネジメント――JR東日本(2/2 ページ)
デザインには、利用者に意識させずに強制的に正しい行動をするよう、うながす力がある。そうしたデザインの力をうまく利用すれば、従業員や顧客など、あまり口うるさく言えない人に対しても正しい行動をうながせる。JR東日本の迷惑行為を未然に防止する座席シートを例に、デザインによるマネジメントについて見ていく。
他分野でもあるデザインによるマネジメント
調達や購買、支出管理の業務でも、デザインによるマネジメントは使われている。例えば、事務用品や消耗品などエンドユーザが多岐にわたる間接材の購買においては、1人1人が正しい品目を、取引すべき取引先から購入するのをうながすのは難しい。そうした際に、あらかじめ購入品目、取引先を絞りこみ、それしか購入できないようにする電子カタログ購買や、予算、購買申請、発注、精算のプロセスのデザインにより、正しいチェックが入るようにする購買統制の仕組みといったものがそれである。
「コスト削減はスタッフのモチベーションを下げる」とよく言われるが、購買統制のプロセス、仕組みを上手くデザインすれば、あまりコストを掛けずに、スタッフ、従業員に対して、あまりとやかく言うことなく、おのずと正しい支出をするようにうながすことが可能である。そうすることで、コスト削減によるスタッフのモチベーションへの影響をミニマイズすることも十分可能だ。
レジやATMでの待ち方の導線を明示したり、ファストフードレストランで回転率を上げるために座席を固くしたりするのも、デザインによるマネジメントの例だ。企業にしてみれば、オペレーションの効率性を上げるためなどの理由で顧客にある行動を取ってほしいことが多々あるが、顧客に対してこちらの都合を押し付けることは難しい。
従業員や顧客など、あまり口うるさく言えない人に対して正しい行動をうながしたい。そうした時には、デザインによるマネジメントが有効だ。(中ノ森清訓)
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