『ブラック・スワン』は、ママのいい子ちゃんが役作りで、あんなことやこんなことになっちゃう怖い話:あの映画ざっくりレビュー
5月11日公開の「ブラック・スワン」。優雅なバレエの世界を描いているのかと思いきや、愛憎入り混じった一分の隙もない緊張感あふれるサイコサスペンスだった。
『ブラック・スワン』はざっくりいうと、お固い優等生タイプのバレリーナ、ニナが「白鳥の湖」の主役の座を射止めるんだけど、黒鳥を踊るにはいいコすぎてうまくいかず「そんな、でもアタシにどうしろと?」っていうプレッシャーの中コワイ妄想に悩まされたりしながらも運命の舞台の幕が開く、っていう話。
ナタリー・ポートマンがオスカー主演女優賞受賞で話題のこの映画、一分の隙もない緊張感あふれるサイコサスペンスで「これ脚本書いたの山岸凉子でしょ?」っていうくらい山岸先生の漫画っぽい。完璧な役作りと多大なプレッシャーの中で狂気に陥っていくニナを取り巻く人物の中で、ラスボスはニナのママ。自身もバレリーナだった母親が娘に向ける異常な愛憎が、2人きりの生活空間に凝縮されていて「逃げて〜!」って言いたくなる。
さほどエロスを醸してないタイプのナタリー・ポートマンがエロくさいシーンにチャレンジしているところも見どころ。『レオン』のマチルダちゃんがあんなことに、とドキドキします。たんすの角に足の小指をぶつけた時のようなイタいシーンが不意打ちであるので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
あらすじ
「白鳥の湖」で主役に抜擢されたニナは、白鳥を踊るには文句のない清純で可憐な女性。自身もバレリーナだった母親の溺愛とサポートを受け、バレエ一筋に生きて来たニナには、王子を誘惑する黒鳥オディールの魔性が表現できない。そんなニナを夜の街に誘い出すリリー、そこで初めて羽目を外したニナは自分を解き放ち、リリーと悦楽の一夜を過ごす。翌日、遅刻したニナは妖艶で黒鳥のイメージにぴったりのリリーがニナの代役に指名されて彼女のパートを踊っているのを見る。昨夜のことを問いただすとリリーは「あなたとは寝ていない」というのだった。役を取られるのではないかと危惧するニナは、だんだんと現実と妄想の区別が曖昧になっていく。
櫻井輪子(さくらい・わこ)
映画好きが高じて、コラムを書いたりもするイラストレーター。『WOWOWマガジン』『問題小説』『てぃんくる』などでイラストコラムを執筆。『Tokai Walker』の金子裕子さんのコラム「セレブ診療所」にコマ漫画を付けている。過去には『DVD&ビデオでーた』でビデオレビューのイラストコラム、『DVDでーた』で記者会見をレポするコラム『現場から櫻井輪子でした』を連載。
著書に『「へのへのもへじ」から始める 世界一カンタン! イラスト練習帳』がある。公式サイト「SakuraiWako'sめカラうりぼう」。
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