大韓航空のエアバスA380がソウル/成田線に就航:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(7/7 ページ)
2011年6月17日、大韓航空のエアバスA380がソウル/成田線に就航した。私は前日に仁川国際空港に入り、当日朝9時10分発の就航初便で成田までのフライトを体験。その詳細をレポートする。
放水のアーチで就航便を歓迎
雲は多めながら青空も見えていた仁川国際空港とは一転、東京に近づくにつれて厚い雲が覆いはじめた。離陸から1時間20分が経過し、KE380便はすでに滑走路南側からアプローチに入っている。地上からの情報では、成田上空の天候はあいにくの雨。この日は結局、1日中降り続いたが、午前11時を回ったときだけ雨は奇跡的に上がった。
定刻より少し早く、午前11時10分に成田空港のA滑走路にタッチダウン。鮮やかなスカイブルーで塗装された大韓航空のA380を一目見ようと、展望デッキやターミナルビルには大勢の人が詰めかけている。着陸後、26番スポットに近づくと、両側に待機していた消防車から勢いよく水が放たれ始めた。就航便恒例の放水アーチによる歓迎だ。
「何だか、あっけないフライトだったね」
機内の通路で列をつくってドアが開くのを待つ乗客の中から、そんな声が漏れた。同感である。A380でのゴージャスなフライトを、実際に上空で過ごせる時間としては正味1時間40分しか味わえないのはもったいない気がする。
秋以降はアメリカ西海岸線でバトル
大韓航空はA380を計10機発注している。その受領予定は、2011年中に5機、2012年に1機、2013年と2014年に各2機ずつだ。1号機は現在、成田からソウルへ、さらにソウルから香港へ飛び、夜間フライトで香港からソウルに戻り再び成田へというフル稼働の状態が続いている。今後2号機、3号機と受領を進め、7月にバンコク、8月にニューヨーク、9月にパリ、10月にロサンゼルスへと就航先を拡大していく計画だ。
A380を世界で最初に就航したシンガポール航空も、2011年7月1日から成田/ロサンゼルス線にA380を投入すると発表した。日本とアメリカが、初めてA380で結ばれることになる。米国西海岸は、日本からの旅行先として人気が高い。シンガポール航空のA380就航を歓迎する一方で、いまから大韓航空のソウル/ロサンゼルス線へのA380導入を心待ちにしているファンも多いのではないか。前述したように、大韓航空は日本の15都市に就航している。首都圏の利用者は成田から飛べるが、地方都市で暮らす人たちにとっては仁川は重要なハブであり、仁川を経由して欧米を旅行する人が少なくない。
多くのファンから根強く支持されるシンガポール航空と、日本人旅行者に最も身近な外国エアラインである大韓航空と──2011年10月以降は米国西海岸への旅をめぐって、両社の熱いバトルが始まることは間違いない。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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