(続)スティーブ・ジョブズはどこにでもいる:遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(4/4 ページ)
アップルの創業者スティーブ・ジョブズが、CEOを辞任すると発表した。ジョブズといえば数々のヒット商品を生み出してきたが、彼になるためのキーワードは何だろうか。またジョブズ引退によって、日本が学ぶべきことがあるのかもしれない。それは……。
いまや化け物みたいな売り上げ規模になったアップルも、世界をまるごとインデックス化してしまったグーグルも、その先輩格にあたるマイクロソフトも、“勝つ”ことに対する非常に強い執着を持ってやってきたのだ。
何をいまさらと言われるかもしれない。だが、“勝つ”ことへの執念と情熱、そのために費やす膨大なエネルギーこそが、技術を育て、未来を作り出してきた大きな原動力のひとつなのだ。そして“勝つ”という目標が強烈であればあるほど、どっしりと長期的なレンジでモノを見ることができ、最適な技術が出てきたときに、最良のデザインで製品化することができる。
ジョブズ引退で日本が学ぶべきは、いくらか忘れかけている、この“勝つ”ことについての強い執着かもしれない。最近のアップルやグーグルを取り巻く知財がらみのニュースを眺めていると、そのことを強く思わざるをえないのだ。
遠藤 諭(えんどう さとし)
1956年、新潟県長岡市生まれ。株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所 所長。1985年アスキー入社、1990年『月刊アスキー』編集長、同誌編集人などを経て、2008年より現職。著書に、『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書および電子書籍版)、『日本人がコンピュータを作った! 』、ITが経済に与える影響について述べた『ジェネラルパーパス・テクノロジー』(野口悠紀雄氏との共著)など。各種の委員、審査員も務めるほか、2008年4月より東京MXテレビ「東京ITニュース」にコメンテーターとして出演中。
コンピュータ業界で長く仕事をしているが、ミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』の編集を手がけるなど、カルチャー全般に向けた視野を持つ。アスキー入社前の1982年には、『東京おとなクラブ』を創刊。岡崎京子、吾妻ひでお、中森明夫、石丸元章、米澤嘉博の各氏が参加、執筆している。「おたく」という言葉は、1983年頃に、東京おとなクラブの内部で使われ始めたものである。
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