本当に大事なことは何?――“数値”は手段であって目的ではない
私たちはしばしば、数値に収まること、数値を獲得することを目的化する時があります。その時、手段が目的に変わってしまっている場合が多いものです。
著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。
先日のテレビのニュース番組で、聖路加国際病院理事長の日野原重明さんが100歳を迎えたことを報じていました。今も現役で医療活動を続ける先生の姿を拝見するたび、自分も生涯かくありたいと気が引き締まる思いです。私の読書メモから先生の言葉を1つ紹介しましょう。
「健康とは、数値に安心することではなく、自分が『健康だ』と感じることです」──日野原重明『生きかた上手』より
私たちは、何かと数値で管理し(され)、時間で管理する(される)時代に生きています。仕事上のことのみならず、私的生活上のことまで、管理表や時計の中に収まるよう自分を仕向けます。
数値管理による生活は“小さな安心・満足”は得られても、生きていることの“大きな実感・自由感”は失われます。時に数値を離れ、時計を外して、自分の感覚で伸び伸びと生活を味わうことが大切ではないでしょうか。
手段の目的化
私たちはしばしば、数値に収まること、数値を獲得することを目的化する時があります。その時、たいてい手段が目的に変わってしまっている場合が多いものです。
私はフィットネスクラブに通っていますが、そこでは「体脂肪率を何%以下にする」「胸周りの筋肉を何センチ増やす」「背筋力を何キロまで強める」といったことを目標に日々クラブ通いする人たちがいます。「この数値のためなら、多少健康を損ねてもいい!」くらいの勢いの人もいます。
また、英語検定の1つにTOEICがありますが、「TOEICで満点を取る」ことをひたすら目指す人たちも世の中にたくさんいます。これらは趣味だと考えれば、向上意欲を持った立派な趣味なので、大いに結構なことではあります。
しかし、やはり最終的に大事なことは、それら数値に収まること、数値を獲得することを超えて、その健康な身を使って何を行うか、その語学力で誰に何を語るか、です。結局、身体や言語は、何か事を成すための手段なのです。
健康のことで言えば、日野原先生は生きがいを持つことが最大の健康法だとおしゃっています。生きがいとは、生きる上での“大きな意味”です。大きな意味のために、自分の身を最大限に生かして使っていく。その過程の中でこそ、人は伸び伸びと健康になっていくものだと思いますし、健康でなければよい仕事ができないので、自然と健康増進にも気を配るようになる。
結局、「目的」が一番大事です。目的の質とレベルに応じて、人は強くなり、賢くなっていきます。(村山昇)
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