決戦は水曜日、ギリシャ救済スキームの行方:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
10月23日に開かれたEUの首脳会議。結論は10月26日に改めて開かれる首脳会議に持ち越されたようだが、何が課題となっているのだろうか。
決戦は水曜日
前回のコラムでも書いたように、こうした国債危機で一番問題になるのは、当該国の国債を保有している銀行の信用度が毀損することだ。そうなれば銀行は、自己資本基準を維持するために貸し出しを抑えることになる。これが実体経済を縮小させることにつながることは2008年のリーマンショックで実証されている。
ギリシャを救済するために、欧州の銀行はギリシャに対する債権の50〜60%をカットする方向であり、これに加えて資産査定を厳格化すれば、当然、銀行の資本増強をしなければならない。EU首脳会議に先立って開かれた財務相会議では1080億ユーロの資本増強が必要とされたが、IMFはそれをさらに上回る2000億ユーロ、さらに別の機関では2750億ユーロが必要との数字もある。これも半端な数字ではない。
こうしたスキームを10月26日の首脳会議で合意することができなければ、それこそ統一通貨ユーロが存亡の危機に立たされると同時に、ギリシャに続いてイタリア、スペインの債務危機、世界同時株安、欧州発金融恐慌という流れになる可能性が強くなる。米国も体力が弱っているだけに、その時には一層の円高になるかもしれない。東日本大震災、超円高、さらにタイでの大洪水と日本企業にとっては災難続きだ。生産設備への海外への移転はいやおうなく加速されるだろう。
それだけに日本政府はよりスピード感をもって欧州危機に対応しなければならないのだが、どうも野田首相にしても安住財務相にしても、欧州危機は「対岸の火事」という域を出ていないように思える。復興財源の増税期間を10年にするのか15年か、さらに長期にするのか、ということより900兆円という日本の借金をどうするのかの道筋を描くことのほうがよほど重大だと思う。
欧州危機に関して運用会社ブラックロックのCEO、ラリー・フランク氏はこう語っている。「もし政府が信頼できる解決策に沿って動いていると民間金融機関が思えば、それらの政府が財政を再建し、将来の成長戦略を築く時間ができる。そして民間部門もそれを支持するだろう」。いままさに日本がしなければならないのは、これである。
ギリシャ危機で最大の問題の1つは、ギリシャ政府が当事者能力を疑われたことにあると思う。もし日本の債務危機が本格化したら(製造業の海外移転が加速して、経常黒字が縮小してきたら本当に危なくなる)、その時になって慌てても遅い。
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