「電子書籍元年」と騒がれたけど……なぜ電子書籍は普及しないのか(2/2 ページ)
昨年「電子書籍元年」と騒がれてから、1年以上が過ぎた。ユーザーにとっては、ほとんど何も起こらなかった業界であり市場だが、そろそろ勝負が見え、先行きは見えてきたのだろうか?
読者が本当に求めているものは
そして相変わらず、まだまだ電子書籍プレイヤー企業間でのデバイスやフォーマットの提携、連携も少なくない。「電子書籍市場は完全に勝敗が見え、79ドルで提供されるKindleによってアマゾンの1人勝ちが決まった」という論調も多い中、楽天は電子書籍ストア「Raboo」で購入したコンテンツをソニーの電子書籍リーダーで取り込むことができるサービスを始めるという。もはやユーザーは何が起こっているのかさっぱり分からない。これでは、冒頭のアンケート結果になるのも無理はない。
それでも新たなメディアとテクノロジーを駆使し、新しい体験を提供する「ニコニコ静画(電子書籍)」(ドワンゴ)のようなサービスもある。
先日発表された「ニコニコ静画(電子書籍)」は、ソーシャルリーディングの新しいプロセスと体験を提案するもので、「ニコニコ動画」と同じように、読んでいる電子書籍の上にコメントを投稿することができる。「範囲指定コメント」や「Twitter連携機能」など、読者同士で書籍への感想を発信し、共有できる、これまでにはなかったサービスだ。さらに角川書店との連携によって、角川の「BOOK☆WALKER」で購入したコンテンツは、「ニコニコ静画(電子書籍)」上で閲覧することもできる。
また、ドワンゴの川上会長は「作品を作るにはクリエイターと同等かそれ以上に、編集者やプロデューサーの役割が大きい」と語っている。これは角川グループホールディングスの角川歴彦会長とドワンゴの川上量生会長による対談の中での言葉だが、まさに、現状の電子書籍業界の核心をついている。
電子書籍の将来という話になると決まって出てくるのは、権利問題とフォーマットの談義だが、読者・ユーザーが欲しいのは、テキスト情報だけではなく、その読書体験がもたらす感動や共感、知的楽しさであり、商品としての新しい形なのだ。(猪口真)
関連記事
- 一人勝ちアウディのブランディング戦略
アウディの勢いが止まらない。日本で初めて輸入車シェア10%を突破し、3月の世界販売台数は月間記録を達成するなど、破竹の勢いを続けるアウディ。その徹底したブランディング戦略を探る。 - 不況でも伸びてます! 化粧品通販のマーケティングに注目せよ
百貨店やスーパーなど、既存流通チャネルがかつてないほどの苦境を味わう中、衰えを知らない化粧品通販。市場規模は2500億円を突破し、とどまるところを知らない。この不況下でも、確実な伸びを示す化粧品通販業界では、どのような試みが行われているのだろうか。 - “問い続ける男”が教えてくれる、“続けさせるマーケティング”――アウディ
アウディ ジャパンのキャンペーン「問い続ける男」が面白い。ある時は哲学的に、ある時は怒りながらこちらの質問に答えてくれるのだ。単なる言葉のゲームではなく、「問い続ける=中毒性」が成立することに“巧妙”さがうかがえる。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.