残念ながら、「健康な会社ほど研修効果が高い」という皮肉(2/2 ページ)
「思いがけず病気や体調不良になってしまったから、病院に行って治してもらおう」という感覚で、研修を実施しようとする経営者は少なくないという筆者。しかし、普段から問題に向き合っている企業と、そうでない企業とでは研修の効果は異なるようです。
思いつきで研修をやっても意味がない
「健康そのものの人が大病する、不健康なのに大過なく長生きするという場合もあるだろう」と言われるかもしれませんが、それは例外でありますし、だから不健康でも構わないということにはなりません。講師としてやっていると、組織や人材の改善・強化をしようとしてきた会社と、それらには無関心で「病気になったら注射を打って直せばよい」という会社では、受講者の研修への取り組み姿勢、内容の受け止め方、現場で使えるように自分の問題としてとらえる思考などにおいて、違いは歴然としているのです。
ちょっとずつでも地道に健康管理や体質改善を継続してきて、振り返ってみれば「元気でいることができた」「無事で何よりだ」と感じる。研修とは、そのような状態を実現するための手段の1つです。組織や人材について、そのうまくいっていない部分を直すのには、人事異動や組織の改編、人事制度や評価の改定、知識の伝授や技術伝承の仕組み作り、職場環境やコミュニケーション、ワークスタイルの見直しといった多様な手法が考えられます。これらを組み合わせて実行し、時間をかけて効果を出していく。そういう会社に研修は効果的なのです。
研修は、組織が将来もずっと健康でいるために継続して行う活動の1つであって、病気になった時にその回復を図る企画モノではありません。困ってから思いつきで研修をやってみたり、流行のテーマや他社がやっているものを安易に取り入れてみたりして、その効果を云々するのは、まるで、三日坊主のランニングやテレビで紹介された健康法にすぐに飛びついて「効果がなかった」と言うのと同じです。(川口雅裕)
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