何が日本の政治改革を妨げているのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
日本に限らず、世界でも「政治の劣化」がささやかれるようになっている。私たちが選択している民主主義が機能しなくなっているのはなぜなのだろうか。
嘆いているだけでは何も変わらない
先日、ある与党議員と話す機会があった。その議員に言わせれば、すでに政党は機能不全に陥っている。民主党、自民党、どの政党でも同じ。いわゆる「政界再編」で政党の順列組み合わせを変えてみても事態を改善することはできないのだという。法律を決めたり、変えたりするためには議員でいることが必要だが、数を得なければ力にならず、そうなると政党のしがらみに縛られてしまうというジレンマに陥っているように聞こえる。
ある官僚は「政治家も官僚も国民も、要するに覚悟が足りない」と語った。民主主義というからには、最高権力を持つのは国民だ。その国民が、自分たちに都合のいい話ばかりを政治家に求めれば、政治家は結局それに迎合せざるをえない。税金を上げられるのは嫌だが、社会保障はしっかりしてほしいというのは、しょせん無理な話なのである。
「無駄を削れ」というのは分かりやすいし、無駄は必ずある。昔、トヨタを取材していた時、「絞ればまだ出るボロぞうきん」という言葉を聞いた。トヨタほど無駄を徹底して省いた企業でも、まだ絞れるという戒めだ。
国や地方自治体は、無駄を省くというインセンティブはない。予算が多い、人員が多いことが存在価値を示すからである。それを「削る」というのは存在価値の否定につながるから、役人はやりたがるはずはない。それでも、無駄を削れば、例えば税金を上げなくても社会保障を持続可能にできると考えるのはあまりにも楽観的である。
さらにそれを世代間戦争にするのも事実を直視しないことにつながっている。団塊の世代の一員として、若い世代に負担をかけるのは申しわけないという気持ちはあっても、先日の人口推計にあったように、今から50年後の老人の比率は現在よりも高いのである(その時には団塊の世代は消えている)。
出生率が1.3前後であれば、後の世代の数が少ないという状態が続くということだ。すなわち、今の若者が世代間格差に怒っているのと同じように、未来の若者も世代間格差を怒ることになる。
きちんとした試算や推計に基づいて、私たちは自分たちの国が将来どうなるのか、その負担をどうすればいいのかを真剣に考えてみなければならない時に来ていると思う。よく街頭インタビューで「もう少しちゃんとやってほしい」という感想を聞くが、それだけではたぶん足りない時代なのだ。政治の劣化を嘆き、英雄的なリーダーを待望しても、おそらく何も解決することはできない。
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