なぜ人は商店街を訪れるのか? “高架下開発”の2つのアプローチ:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
JR御徒町駅とJR秋葉原駅の間の高架下にある商店街「2k540 AKI-OKA ARTISAN」。“ものづくりの街”がコンセプトで、多くの雑貨店が軒を並べるが、どうにも食指が動かない。その理由を考えていると、商業空間の開発に2つの方法があることに気付いた。
劇場感覚か探索感覚か、それが問題だ
そう考えていくと、商業空間開発の2つの視点が見えてくる。それは「人工的なモールを創る」か「土地と融合する」か、どちらかなのである。
ショッピングモールとは、厳密なゾーニングと動線プランを突き詰めた人工空間である。駅ナカのエキュートでもクローズドな商業空間が作られている。「あの店に行こう。ついでにあそこもチェック」と、ぶらりも目的買いもできる。お客さんが劇場で劇を観る時のように、つかの間の「買い物主人公」を演じられる空間作りなのである。
その証拠にショッピングセンターから出る時、劇場を後にするような錯覚にとらわれる。屋内型でも屋外型でも“劇場感覚”がショッピングモールの成功のカギの1つである。
だが2k540ではそこまで日常から切り離されない。途中で出入りできる脇道もある。天井に鉄道(高架)の痕跡もある。
もう1つのカギは“探索感覚”。「こう歩けという予定調和型のショッピングはキライ。ぶらぶら歩いて自分で何か発見したいの!」という人にとっては、あちこち歩けるオープンな商業集積が楽しい。
昔ながらの商店街がそれだし、その商店街に新感覚の店が増えて路地裏や民家まで広がる“ハイパー商店街”もある。シモキタやウラカシ(裏柏)などが好事例である。
「クローズド=独自世界の構築」「オープン=地域世界との融合」、どちらが優れている/いないではない。それぞれ立地を読み、来街者の感動を想定し、どちらに比重を置くかという判断の問題なのだ。
だが、2k540では「土地と融合する」開発が望ましいのではないか。ここではオタク文化のクローズド・カルチャーモールもできるし、猥雑(わいざつ)でワイルドな軒下商店街もできる。その高架下は歴史を背負った“レキシタ”だからである。
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