ホワイトハウス・コンサートから文化ビジネスの突破口を探る:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
2月21日にホワイトハウスで行われたコンサートでは、B.B.キングやミック・ジャガーらがブルースを歌った。そのコンサートをヒントに、文化ビジネスで米国に押される日本の突破口を考えてみた。
文化ビジネスは「好きだから伝えたい」「紹介したい」がベース
ホワイトハウス・コンサートで歌ったミック・ジャガーは、ブルースを聴いて音楽を始めたことで知られる。米国南部のブルースを英国に紹介するため、バディ・ガイやマディ・ウォーターズらブルースの巨人たちの曲を歌った。
音楽ビジネスを変えた故スティーブ・ジョブズのお手本は、プロテスト(反抗)シンガーのボブ・ディランだった。シンガーの既存文化を破壊する生き方に共鳴して、ヒッピースタイルにひたった。長髪、はだし、ドラッグ……およそ現代の起業家らしくはなかった。だが、iTunesやiPodで音楽業界を変革した原動力は、「ディランの歌を紹介したいから」だったのではないか。現に後年、iTunes Storeで『ボブ・ディラン全集』パッケージも販売している。
文化ビジネスには、「好きだから伝えたい」「紹介したい」がベースにある。「売る」とか「製造する」とかから入ってはダメ。好きなことをいかに紹介するか? そこからスタートすればビジネスも広がっていく。
文化とは反抗すること
文化を伝える上で、もう1つ定めがある。それは「既存文化を破壊せよ」。文化とは過去の否定ないし上塗りで新しくなり、深まる。
それはビジネスで「業界のおきてを破ること」に通じる。ヴァージングループを創業したリチャード・ブランソンも、ダイソン掃除機のジェームス・ダイソンも既存のおきてへの反抗者だった。だから、あなたがもしも文化系で、ビジネスでドロップアウト組だったとしても、大いに可能性はあるだろう。
「紹介したい」の象徴とも言えるホワイトハウス・コンサート。でも、ミック・ジャガーはホワイトハウス・コンサートを「栄誉だ」と語ったが、反抗のシンボルのボブ・ディランはホワイトハウスではコンサートしないだろうな……。
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