都心部ファッションビル中心から駅ナカ業態に挑む、パルグループのビジョン(2/2 ページ)
1日に数万人単位で人々が行き交う駅への出店を目指すパルグループ。女性向けが多い既存店と比べて、同じブランドでも店つくりを大きく変えるという。
「お、これほしい」「あ、あれ忘れた」 直観で選べるアイテム展開
もう1つ、駅ナカ業態向けに既存の店つくりと変更したポイントがある。パッと見た印象で購入につながるアイテム展開だ。
大西さんは「駅というのは買い物をしようと思って出かける目的地ではなく、通過点です。そこで、買ってもらえるアイテムというのは直感的に『お、これほしい』『あ、これかわいい』と思ってもらえるになります」という。
普段、人々が通り過ぎてしまう駅ナカ店で目を惹くアイテムというのは、思わずお土産に買って誰かに伝えたくなるような「ちょっとセンスのよいアイテム」や、ビーチタオルや浮き輪などのマリンレジャーグッズのような「そうか、もうこんな季節か」という気づきを与えるようなものではないかという考えだ。
さらに3COINSの駅ナカ業態「3COINS OOOPS!」では、別の切り口でも切り込む。英語のoops(ウープス)とは「しまった!」といった意味。同店では、突然降りだした雨に「あ、傘がない」、突然決まったデートに「あ、化粧品がない」といった“緊急事態”を解消するアイテムを315円で展開する。
男女が行き交う駅だからこそ、ユニセックスな品ぞろえを
どちらかといえば、女性向けのブランドが多いパルグループだが、駅ナカ業態のキーワードは「ユニセックス(男女兼用)」だという。大西さんは「駅ナカという新業態に挑戦するに当たって他社の状況を調査しましたが、ユニセックスな展開はできていない」と断言する。
「一般的に、購買意欲が高いのは女性です。ですが、駅には多くの男性がいます。必ずしも男性向けの商品を多く展開するということではありませんが、男女兼用で使える商品を並べるというのは重要なポイントだと思っています」(大西さん)
例えば、3COINS OOOPS!には、女性用の化粧品のほかに男性用の靴下やネクタイなども用意する。BIRTHDAY MINI BARには、晩酌のおつまみによさそうな「大江のり」や「カレーかきもち」「えび揚げもち」などが並ぶ。
russetの駅ナカ業態「Daily russet」では、既存店舗より「よりカジュアルに、よりユニセックスに」という方針のもと、ロモグラフィのフィルムカメラや男性でも使える色合いにしたタブレット端末ケースやインナーバッグなどを陳列する。
2012年3月に1号店を丸の内にオープンしたばかりのLIVETARTでは、シンプルで上質な大人の女性をターゲットにライフスタイルを豊かにするこだわりアイテムを並べているものの、ウエシマコーヒーと共同開発したオリジナルブレンドコーヒーやメンズのシャツ、島根県にある出西窯(しゅっさいがま)の器、岡村太郎デザインの「サイコロ椅子」など、男性でも楽しめる品々も扱っている。
パルグループでは、「すべてのブランドを対象に、ディベロッパーからの引き合いがあり次第、駅ナカ業態での出店を始める」としている。
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