中国だけの話じゃない!? 監視社会へようこそ(2/2 ページ)
「テロとの戦い」という名のもとで、監視社会に向けてさまざまな技術が導入されている。それは国民の安全、国家の安全のためと言われるが、実際は誰が、何を監視するためなのだろう。
監視社会へようこそ
ここで使われている技術はディープ・パケット・インスペクション(DPI)と呼ばれ、プロバイダのコンピュータに専用の機械を接続して、利用者がサーバーとの間でやり取りする情報を読み取る技術である。これを利用すると利用者が閲覧したサイトや購入履歴、検索したものなど情報をすべて手に入れることも可能となる。内容を書き換えたり、別の人に転送することもできる。またインターネット検閲といえばすぐに思い浮かぶ中国でも、もちろんこのDPIが使われている。
つまり、これらのコミュニケーションネットワークを監視する技術を持つ企業は、将来有望な、新しい産業なのだ。営利目的の企業ならこの技術がどのように使われようとも、それを広めようとするのは当然であろう。DPIをWebのブラウジングに使えばオンラインでの動きはすべて記録でき、その情報こそマーケティングの専門家が求めているものだ。つまりDPI技術を使ってWebサイトを分析すればプロバイダーはGoogleのように利益を出すことができるようになる。また知的所有権の観点から違法ファイル共有をやめさせたい場合も、DPI技術を使えばファイルをダウンロードしようとする人をブロックすることも可能になる。
商用だけでなく、フランスではこの技術を使い捜査の一環として容疑者の通信を監視することは合法的に行われている。この技術を使えば、政府は好ましからぬと政府が認めた国民の通信をモニターすることは可能だということだ。
米国もフランスも、IT関連機器のメーカーに対し、こうしたインターネット利用の監視や制限を可能にする機器を外国政府に販売しないよう求めてはいる。しかし欧米が利用しているものを、イランや中国が利用しないはずはないし、日本政府ももちろん同じである。
電子通信の濫用は、電子通信そのものが使えないような状況をもたらすか、またはオーウェルの記述したようなすべての国民を監視の対象下に置くような世界を作るか、どちらかになる可能性はぬぐえない。スマートフォンユーザーはこうした現実を理解しているのだろうか。(トッテン ビル)
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