日本が誇れるものってナニ? この20年を振り返る:博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(4/4 ページ)
日本人はこの国のどんなところに誇りを感じてきたのだろうか。博報堂生活総合研究所が行っている調査データを基に、この20年間の特徴的な動きを紹介しよう。
これからの日本の誇りの期待の星は「質の高いサービス」
それでは最後に、この失われた20年という厳しい時代の中でも、日本の誇りとして急上昇した項目をご紹介しましょう。それは「質の高いサービス」です。1992年には21.2%あったものの、2000年には10.8%までダウン。その後伸張を続け、2012年には35.2%まで上昇しています。
前述の「国民の義理がたさ」「国民の人情味」同様のV字回復タイプなのですが、ここまで大きく回復しその後も大きく伸張した項目はありません。サービスの質の高さとは、どれだけデジタルなコミュニケーションやソーシャルメディアといったインフラが浸透しても、求められるものであり、世界のフラット化がいかに進もうが、他国に対して日本が唯一無比の価値を発揮しうる領域であると、日本の生活者が感じ始めているのでしょう。
「おもてなし」や「ホスピタリティ」という言葉がよく聞かれますが、それは日本人だから提供できる価値という意味で、同じことをさしているのだと思います。今後、日本が21世紀を生き抜くためには、V字回復を達成した「義理人情」を内包し、回復しつつある「治安のよさ」と「勤勉さ・才能」も生かした、独自の質の高いサービスを実現することが、求められると考えられます。
そして最後にひとつ付け加えるなら、16項目の中で「日本の誇り」として、最も数値が高い3つはトップが「治安のよさ」であり、2番目が「すぐれた文化・芸術」、3番目が「美しい自然」なのです。この3つこそ日本が世界に誇りうるすばらしい“資産”であり、この3つ抜きには、これからの日本の誇りづくりは考えられないというのも、また事実であると思います。日本ならではの新しい高品質なサービスを提供していく際には、こうした要素も当然活用していくべきと考えます。
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